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カンボデイア インド スリランカ タ  イ

アジアの農業機械化実態総集編

「農林水産省 農業機械海外技術協力緊急対策委託事業」総集編

はじめに

平成7年度に始まった 「農林水産省 農業機械海外技術協力緊急対策委託事業」は、インドネシアの調査から始まった。その後、平成8年度はヴィエトナム、平成9年度からは「農林水産省 農業機械海外技術協力委託事業」として社団法人 全国農業改良普及協会との合同調査が始まり、フィリピンの調査を実施した。平成10年度ミャンマー、平成11年度ラオス、平成12年度カンボデイア、平成13年度インドと調査を進め、平成14年度にスリランカ・タイの調査を行って事業を進めてきた。
 調査開始の頃に東南アジアで農業機械化の需要が強くあった国は、現在無償援助対象国を卒業したタイ・マレーシアとインドネシア・フィリピンであった。第2次・第3次産業が未成熟な1980年代後半から1990年代にかけては海外から魅力的な商品の流入の方が先立ち、産業基盤の育成が遅れ気味であり、農村労働力の受け皿は小さく、多くの若者が燻っていた。
  アジア経済危機を乗り越えた後は、タイ・マレーシアは中進国に成長し、インドネシア・フィリピンは政治的な混乱が続いているが、経済は徐々に発展を続けている。これらの国の農業人口は既に50 %を切り、マレーシアにいたっては17 %を切っている。
  事業実施中に、アセアンの中心をなすこのインドネシア・フィリピン・タイ・マレーシアの4ヶ国およびミャンマー・インド・バングラデシュ・スリランカ等の機械化営農は急速に発展した。
  一般に農業機械は、コントラクターや営農集団の行う賃耕・賃脱穀サービスが多く利用される。ミャンマーやスリランカでは国営の全国的なサービスがあり、農家の利用が多く、民間のコントラクター業の育成も行っている。
  中古エンジンや中古部品でカスタムメードされていた農業機械は、インドネシアやタイで見られるように外国企業との合弁や技術提携事業で品質向上・設計製造技術・経営の近代化や機械性能の向上が図られてきた。
  日系メーカーは、アジア各地で製造される自社ブランドの機械や部品から安価で高品質の農業機械を組み立てて現地企業として供給している。価格も中国製品に負けなくなっており、利用期間のトータル投資コストは中国製品より安いという評判であり、下取り価格が高いため、農家の需要は拡大基調にある。
  欧米の畑作用トラクターと日本式水田用トラクターの違いについて、日本のODA担当機関の認識は低いが、稲作国の事業実施機関での認識は高くなっている。
  日本の稲作用農業機械のアジアでの発展は、これまで官民が地道に行ってきた農業セクターでの海外技術協力の誇るべき成果である。今後の課題としては、機械化営農技術の普及や農作業安全推進等が残っている。

なお細かい資料は、本会報告書の付録「アジアの農業機械化情報一覧表」を参照していただきたい。

                                                                     文責:
                                                                株式会社徳本適正技術研究所
                                                                          徳 本  靖

目    次

1.稲作生産の推移と動向 
2.社会経済・労働力の推移と動向

3.農業機械の普及および適正農作業体系 

4.農業機械化行政

5.農業機械の研究開発・検査と製造
6.市場・流通・サービス体制 
7.農業機械化の教育・訓練

8.農業機械化の発展段階と国のグループ化



ミャンマーの一頭曳き(シャン州)
              インドネシア 西ジャワ 棚田の田植   (正条植え)
主要稲作地帯はパワーティラーによる耕耘が進んでいるが、機械の進入ができない中山間地水田は水牛による牛耕である