売れる米作りで機械化フォーラム
JA越後さんとうにおける水稲品質向上に向けたリモートセンシングへの取組み
JA越後さんとうこしじ中央支店営農課長 水島和夫氏
JA越後さんとうの概要
 JA越後さんとうは新潟県中越地域の信濃川左岸地帯に広がる越後平野の一端に広がる水田単作地帯で、平成13年2月1日に、三島郡一円の寺泊町・和島村・出雲崎町・与板町・三島町・越路町・長岡市(一部)の3JAの合併により誕生した広域JAです。
 このたびの中越地震では、大きな被害を受け、中山間地ではガスがまだ行き届かないような状況ですが、ライフラインはある程度復旧してきたという状況です。
 越路町は、長岡から信越線で3つ目の駅の位置になり、町には1400haほどの耕地があります。町内には3つの駅とそれぞれに3つの代表的な企業があり、来迎寺には朝日酒造、越後岩塚には米菓の岩塚製菓、塚山にはヨネックスがあります。
 越路町は、水稲が8割強を占めており、水田単作地帯です。園芸関係が進まなかったという状況で、水稲で生計をたてているといっても過言ではありません。ただ、水田の有効利用ということで、24集落の中に法人が10組織、そのほか生産組織等が6あり、法人が多く育っています。転作も、大豆、麦の3作体系で、早くからブロックローテーションという集団転作の手法をとってきました。ここにきて生産目標数量が私どもが予想していた以上に、県配分が大きくなって、コシヒカリの種子が足りないという状況になり、種子の手配に奔走しました。
 水田ビジョンは、地域の戦略が見える、地域が何をしているか、地域は将来的にどういうことを考えていくんだということを明確に打ち出しました。私どもは、先ほどの酒造会社さんとのお酒にかかわる生産数量、それと今年は米菓会社さんとのモチ米の契約という形で、売れ先が見える、そして確実に契約栽培にもっていくということで、作るだけでなくそれを売っていくことを目指しています。
 また、リモートセンシングの部分では、現在は酒米に活用させて頂いています。
衛星リモートセンシング事業
 私ども農協の経営理念として、「環境に優しい未来農業を目指す」「地域とともに地域社会との共生を」の2つを持っており、環境に優しいという意味では、環境保全型農業を推進しています。全耕地に堆肥を散布しており、これも地域農業システムづくりの一環です。それとISO14001を昨年12月に取得しています。
 地元産米のブランド化では「越路の華」という名前で展開しています。地域のブランド化を図っていく必要があるだろうということです。
 リモートセンシングは、北海道の長沼町が最も早く取り組まれ、私どもは、長沼町の内容を聞き、即北海道に飛びました。なぜリモートセンシングの技術に取り組んだかというと、私どものカントリーエレベータの利用が高く、80〜90%という利用率になっています。カントリーエレベータが3号機まであり、今6500tになっています。75%程度の稼働率ということですが、やはり刈り取る時期が集中します。これを何とか分散化したいということもあります。刈り取り適期を把握できればさらによいということで、それが一番の目的でした。
 もう1つは、今の米の等級の中でも1等米を生産するのが当たり前、ただ1等米の中でも幅があるわけで、より良いものを集めて売っていく、そういう考え方も必要だろうということで、このタンパク含量を見るために、リモートセンシングの活用を考えました。
リモートセンシングを酒米に適用
リモートセンシングの目的としては、各種IT活用による新たな営農展開への取り組み、あるいは情報リテラシーの向上への取り組み、地図システムを活用した戦略的農業生産への取り組みがあります。
 衛星リモートセンシングは12年からですが、北海道の水稲の生育の生育ステージが、私どもと全く合わなかったということで、12年はこれという成果が出ませんでした。NDVIという測定指数があり、私ども独自の測定指数を求める必要があるということで、13年は地上データを基に、リモートセンシングを詰めていきました。
 実質的には今、私どもは酒米でリモートセンシングをやっています。高付加価値、有利販売ということです。酒米の「五百万石」は誰でも作れますが、「たかね錦」は最初から契約と部会を設けてやっており、この「たかね錦」で造るお酒が非常に高く、1.8Lで1万円程度になります。このお酒を造るためにはタンパク含有量で3区分という形になっています。ですので、1等米を作るというのではなく、1等米の中のタンパク含有量で格差をつけるということになっています。
 また「千秋楽」という品種も、少ないのですが、タンパク含有量で価格差をつけています。
 酒造会社さんではリモートセンシングのことを知り、15年には「五百万石」についてもタンパク含量で分けてほしいという話がきました。これを実践という形でやろうとしました。
 ところが、よく言われるのは、うるち米で、コシヒカリについてやってないですかと聞かれます。解析等はやっていますが、カントリーエレベータのサイロの関係、現場との関係もあり、今サイロ分けをやっているのは、この「五百万石」です。これに衛星リモートセンシングを使っています。
 3区分の要望がありますが、施設の関係上、2区分にさせていただき、低タンパクのものについては、上乗せ価格を設定しています。
 リモートセンシングの仕組みは、農家台帳と圃場管理システム、生産技術システム、地図システムの3つがあり、衛星画像を解析し、それを農家台帳・地図システムと連動し、タンパク含量別に色分けされマップとして表示するようになっています。このマップを用いて、技術指導やタンパク含量の低い圃場で行われている栽培技術を役立てるなどの活用も行っています。

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