農家視察〜吉田勝一氏、長嶋道生氏
ダイコン選別機で省力化

次に三神氏の案内で、三浦市農業機械化研究会(会員19人)の農家を2軒視察。
 吉田勝一氏は同研究会の会長で、若手のまとめ役。150a(ダイコン100a、春キャベツ50a、カボチャ30a、ミカン35a、施設イチゴ1000u、直売用野菜10aなど)を経営し、研修生も積極的に受け入れている。また、2年前から、近隣のホテルと連携しミカン狩りや、高設イチゴハウスにおける観光農園(イチゴ狩り)を始め、経営の多角化を図っている。イチゴ狩りは入園料1人1400円で、昨年は約3000人の来場があった。
 長嶋道生氏の経営は、耕地面積約160a(ダイコン160a、春キャベツ70a、スイカ60a、トンネルメロン30a)。同氏は2年前に最新のダイコン重量選別機を導入し、大幅な省力化を実現した。
 この選別機は、地元の谷田商会(三浦氏初声町)が開発(製造は台湾メーカーに委託)したもの。価格は洗浄機とのセットで300万円。選別機だけだと230万円だという。主な仕様は、長さ2978mm×幅1289o×高さ1324oで、従来機よりコンパクト化したのがひとつの特徴。処理能力毎時2700本(毎分45本)、ロードセル(PLC)による比較軽量選別方式で、仕分けは5階級、3種類の仕分け設定が可能となっている。共販、個選など事前に選別階級を登録しておける。コンベヤー付きのダイコン洗浄機とセットで使用する。仕組みは、ダイコンが手作業で1本ずつトラック荷台からコンベヤーで洗い機に送られ、洗浄された後、1本ずつのバケット式コンベヤーで移動する間にセンサーで重量を感知し、あらかじめセッティングした規格ごとにコンベヤー下の水槽に落下、振り分け選別を行うというもの。洗浄機にコンベヤーを取り付けたことで、洗浄機へのダイコンの投入労力の軽減を図った。通常3人作業で、1人がトラックから洗浄機にダイコンを投入、2人が選別後のダイコンを取り出しカゴに並べる作業を行う。

自身の経営内容などについて話す吉田氏

機械化の成果などについて話す長嶋氏

20年もつ耐久性を追及

説明に当たった谷田商会の開発担当者である鈴木盛久氏は、「三浦のダイコン農家は1戸当たり年間10〜30万本の生産量がありこれに対応するため、総力を挙げて開発した」と自身を示した。とくに「20年は使っていただこうという気持で、バケットに耐久性の高い超高級なステンレスを使用した」強調。水を大量に使うため、耐久性に優れたステンレスが必要ということで、SUS304というステンレスを採用した。バケットはかつてプラスチックで作ったが、5〜10年で交換が必要になったため、今回はバケットのメンテナンスフリーを目指して同ステンレスの採用に踏み切った。このため製作費が高くつき、「いくつも見積もりをとったが、こちらの希望の価格では国内メーカーさんにはやっていただけなかった」と製品化に至る経緯を話した。コンピュータ部分は日本製で、修理の際の部品なども用意に入手できる。
ダイコン選別機の性能を説明する谷田商会の鈴木氏

機械なしで作業できない
同機は現在三浦地域で21台導入されている。14年前にもっと大型のタイプがあり、今回それをモデルチェンジしたが、旧型のものが三浦に70台、全国で100台以上普及しており、将来的に全てが新型に更新されると見込んでいる。
 長嶋氏は、1日に軽トラック4台分の大量出荷を行うため、出荷作業の省力化が大きな課題だった。同氏は、「これまで軽トラ1台分の作業に1時間かかっていたものが、30〜40分でできるようになった。もはや機械なしで作業はできない」と、機械化による省力化の効果を話した。谷田商会も「お客様がいつも身近いいて、色々な要望をドンドン吸収できまるので、よりニーズに合った開発ができる」と、地域におけるユーザーとの協調関係を重視している点を述べた。
長嶋氏が導入したダイコン重量選別機の実演風景
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