研修はまず、三浦市初声町にある三浦普及連絡所(神奈川県農業総合研究所三浦試験場内)で、同センターの三神和彦主査から、三浦地域の野菜生産の動向について説明を受けた。
〈三神氏の説明要旨〉
横須賀の三浦寄りから三浦市にかけてが三浦半島型農業ということで、神奈川県では有数の農業地帯になっており、特に三浦市のダイコン生産は全国一の産地となっている。というのも、冬に暖かく、霜が降りない地域もあり、そういった地域を中心にダイコンの作付けが行われており、平成13年の農林統計によると、三浦市のダイコン作付け面積は785haとなっている。全国的には農地が減っているなか、三浦市においては谷を埋め立てたりするなどして農地は増えており、ダイコンの生産も増加している。逆に生産量が多すぎて、値を下げてしまっているという状態を引き起こしている。
横須賀の方は三浦ほど暖かかくないため、キャベツが中心。一方、スイカについては、以前はかなり有名な産地であったが、ここ最近は品質的に他の産地に負けていたり、市場が近いことから農家が直接、市場に持ち込む場合が多く、農協がまとめて出荷して品質を揃えるというようなことが難しいため、スイカの生産はやや減っている。
カボチャについては、完熟の「みやこ」という品種を出荷している。着果してから40〜45日で出荷するという統一の基準を作っており、水分が少なくほくほくしたカボチャということで、市場での評価が非常に高い。三浦のカボチャは全国一だと評価していただける市場関係者もいる。
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三浦市農業の概況を説明する三神氏 |
改良普及センターでの研修風景 |
三浦市の農業で特徴的なのは、2000年センサスでみると、総農家戸数935戸のうち、専業農家が454戸と、半分程度が専業で占めるという点。また、新規就農者についても年間10〜15人おり、かなり多いという状況。
以上のように、露地の畑が中心の地帯であり、施設栽培はほとんどない。田もほとんどない露地野菜の産地である。
ダイコン、キャベツというと機械が入りやすいように思われるが、三浦の農地は不整形で傾斜地が多いため、入れにくいというのが現状。
三浦の畑が空いている時期は8月。冬はダイコンが11〜3月いっぱいまで、4、5月はキャベツの収穫、6、7月はカボチャ、スイカなどの収穫があり、8月に冬作の準備をする。
ダイコンにはネグサレセンチュウが付くと品質低下するため、土壌消毒が欠かせない。また、別の防除方法として、マリーゴールドを植えると、センチュウがこれの根に入り込み、すると出られなって死んでしまうということで、一時期はかなりの面積になったが、雑草が生えると雑草に付いてしまうので除草をしなければならず、また、オオタバコガという害虫が発生し、スイカの表皮を食べるなどの被害があるため、最近はマリーゴールドもかなり減ってきている。代わりに、ヘイオーツという麦が利用されている例がある。これはネグサレセンチュウを増やしもしないが減らしもしないというものだが、土作りも兼ねて作付けている。
キャベツについては、多くの産地はセル苗などを使っていると思うが、三浦では地床の苗を使っている。土壌消毒は、以前は臭化メチルで行っていたが、2005年(1月1日)で全廃ということもあり、夏場、苗床にビニールを張って太陽熱消毒を行っているケースもある。移植は手植え、もしくは半自動型の移植機を何戸かが所有していて、それを貸し借りしながら移植を行っている農家もある。
ダイコンの播種は、5〜6割がシーダーテープによるもの。ただ、播種する9月ごろに雨が降らないとテープが溶けないで発芽しないという問題もあるが、楽に播種できるということで最近はこれが主体になってきている。試験場1粒播きについて試験したこともあったが、台風などの影響を受けると欠株が出やすいということで、一部の農家がやっているだけで、大体の方は3〜4粒播きでやっている。
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また、三浦の特異的な栽培方法に「間作」というのがある。冬作の畑を有効に利用するためにダイコンの畝間に春キャベツを植えたり早春キャベツの畝間に春キャベツを植えたりするもの。このような栽培方法だとなかなか機械は入り難い。ダイコンとキャベツの間作の場合、キャベツの畝を広くとらなければならないので、ダイコンの植付けは少なくなるが、キャベツが4月上旬の比較的値が良い時に出荷できるというメリットもあり、かなり広く行われている。ただ、間作をしていると、軽トラックが圃場に入れないということで、収穫作業がかなりな重労働になる。また、農薬についてもダイコンとキャベツ共通のものでないといけないという問題もある。
ダイコンの収穫作業は、軽トラックで畑に乗り入れ、手で抜いて、葉を切断したものをトラックに載せる。しかし、トラックを畑に入れると、土が固まってしまい、年によってはダイコンの先端が潰れてしまうものが出来たりするので、サブソイラーなどを入れるよう指導している。 |
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