地域特産農作物用機械開発促進事業

農林水産省・生産資材課では、「地域特産農作物用機械開発促進事業」の実施状況とこれまでの成果をまとめた。この事業では13年度までに、43の課題が終了。14年度は7課題で継続、1課題に新たに取り組んでいる。成果報告・実施計画では7課題について触れられている。そのうちの新規、継続課題について主な内容をみる。

新規れんこん茎葉処理機

れんこん茎葉処理機
徳島県

 事業実施期間は14〜16年度で、14年度の新規課題はこれのみ。
 徳島県のれんこん栽培は茨城県に次ぐ作付けで、特産物となっている。しかし、機械化されていないため生産農家の労働強度は高く、特にハウス栽培の茎葉処理作業は高温・多湿条件下で鎌などを用いた人力作業となっている。また、露地栽培では、簡易な機械で茎葉を地面になぎ倒していく処理を行っているが、茎葉が掘り取り時に土壌中に埋没し、これが原因となって生理障害や品質低下を招いており、茎葉すべてを圃場外に搬出する必要がある。
 開発機の目標は、@湛水圃場で、れんこん茎葉の刈り取り作業ができるAれんこんハウス内でも作業できるB作業能率は毎時3〜4a、とし、歩行式で走行部をクローラ、レシプロ刃により刈り取り、挟持ベルトで刈り取った茎葉を搬送するものとした。
 14年度は、開発改良計画の策定と、導入調査、開発業者の決定、試作機の作成、評価試験及び改良検討を、15年度にはさらに改良を進め、16年度に最終評価、実用化に向けた啓発活動を行うこととしている。

にんにく種球分割機、にんにく種子消毒機
青森県

 事業実施期間は、13〜15年度。委託メーカー等は、津軽クボタ、岡山農栄社。
 開発機は、にんにく種球分割機と、にんにく種子消毒機で、分割機については、13年度までに試作機を製作、改良を図り、消毒機については試作機の設計を行っている。分割機の実証試験では、市販されている機械より、かなり損傷が少なくなったが、農家を納得させるには、さらに損傷を少なくすることが課題となった。
 14年度については、分割機の損傷の割合を減少させるとともに、試作機で分割した種球を植え付けして生育状況を観察する。種子消毒機では、種子の回転を良くするように消毒機の形を6角形とし、モーター付きのものは省力的であるが価格が多額なるためモーターのないものも併せて製作する。
 今後の予定としては、製品化に向けて、安全面や耐久性等を考慮して細部の改良を行う


軟弱野菜袋詰め機
宮城県

 事業実施期間は12〜14年度。委託メーカーはジー・イー・エス。
 開発機は軟弱野菜の下葉除去及び根部切断、計量、袋詰めを行うもので、目標は収穫・調製が640時間、選別・包装が69時間(作業者延べ人数2人)。現行は4人で861時間。
 13年度までで、調製(下葉除去、選別、計量)機械の設計及び試作、袋詰め器具の設計及び試作を行い、調製機械が生産コスト高、下葉除去が低精度だったことから仕様の再検討を行った。14年度は、調製(根部切断、下葉等除去)器具の設計及び試作、袋詰め(計量、袋詰め)器具の改良と開発器具を利用した調製作業と従来の手作業との作業能率の比較などを実施する。

タラノキ切断カッター
群馬県

 事業実施期間は13〜15年度。委託メーカー等は、マツモト。
 タラノメのふかし促成栽培は、タラノキ穂木を各節ごとに電動丸鋸で5〜10cmの駒木に切断し、ハウス内に設置したプール水中に浸し、萌芽させ収穫するものである。この切断作業で、丸鋸で手指を切断するなどの事故が発生していることから、安全で効率的な切断機を開発するのが目的。
 開発機は、穂木のすぐ上を、芽が上部になるように斜めに切断し、切断精度は慣行手作業並みを目標に開発。試作機により、切断作業での安全性の向上及び作業の軽労化、切断後の駒木の2段階選別、木屑の飛散防止、レーザー光線による切断箇所の判定などの成果を得た。14年6〜7月に7カ所で現地実演会を開催、生産者からの意見により改良を重ね、これを完成。14年度中に市販化したいとしている。

ホウレンソウ収穫機
静岡県

 事業実施期間は13〜15年度。委託メーカーはイモト。
 静岡県のホウレンソウの栽培体系の中で、収穫作業は調製作業に次いで労働時間の多い作業であり、慣行作業は小型の鎌を用いて、しゃがんだ姿勢で刈り取る人力作業であることから、収穫機を開発する。
 目標は、@切断刃は動力で駆動し、走行は人力歩行型A収穫条数は5〜6条、切断幅130cmB圃場に植え付けられた状態のまま土中根部を切断する方式C簡易で安価。
 14年度までに、切断刃の試作と切断部、走行部試作、機能確認、切断部位の確認調査、切断部と本体とのセッティングなどを行い、試作1号機としての性能試験を実施した。14年度は、試作1号機の結果から改良点を明らかにし、試作2号機を作成、性能試験を実施する。今後、実用型試験機を完成させ、性能試験、現地農家でのモニター利用を計画している。


赤土ばれいしょ調製機
鹿児島県

 事業実施期間は、13〜15年度。委託メーカーは松山。
 主産地である長島・大島地区は、土壌が赤土(重粘土質土壌)で、収穫時期に雨が多いため、既存機械では土が付着したり、土塊といもが混入してしまい、土を取り除くのに多くの労力と時間を要している。
 開発機は、付着土壌を除去し、病害いも・青いもをライン上で手選別により除去し、コンテナ収容するもの。作業能率は慣行の約2倍に当たる400s/h以上、作業精度は、処理後の土壌付着率を重量ベースでおおむね3%以下、処理後の損傷率を個数ベースでおおむね3%以下としている。
 これまでの成果として、縦軸イボゴム方式と横軸ブラシ方式の2方式を検討した結果、ブラシの目詰まりなどが明らかになった。14年度は横軸イボゴム方式を試作し、縦軸とイボゴム方式と比較、より効率的な土落とし方式を検討する。

ゴーヤー選別機
沖縄県

 開発機の目標は、@可変式ベルトコンベアの開発Aタッチパネルによる選果個数の計測装置の開発Bゴーヤーの特徴(果皮の突起)を考慮した資材開発C選果調製にかかっている労働時間の削減D選果ラインはインゲン選別機に類似――で、処理能力を基準3秒/1本、1日2tとした。
 13年度は推進事業として、産地調査及び仕様の検討を行い、14年度は農業試験場や選果選別機メーカー、JA等関係機関と連携して、選別機開発について検討。鹿児島県の選別機を調査するとともに、県内で導入している既存のベルトコンベア式選別機を応用し、実際にゴーヤーを使った試験を行うことで、その改善点等について検討する。
 今後の予定としては、果皮の傷みを控えるため、搬送部はベルトコンベアを採用、等階級ごとに計測装置を設置、安価で汎用性のある選別機を開発する。ベルト資材についても検討する。開発メーカーは、インゲン選別機を開発した株式会社くみきで調整中。