トラクターと作業機の適応性(生研機構調査) |
〜生研機構が調査 干渉やバランスのチェックを〜 |
生研機構ではトラクターと作業機の適応性についてメーカー調査ならびに全国規模の農家アンケートを行い問題点を抽出するとともに、これらの結果から購入者の参考となる資料を検討している。アンケート調査結果や適応性の判断ポイントをみた。 |
この調査は、生研機構評価試験部原動機第1試験室の積栄氏らが行ったもの。マッチングの調査から適応性に関するポイントをまとめた購入者向けの解説の作成を進めている。 調査結果をみると、まず、トラクター作業機メーカーからの聞き取り調査をまとめた結果、適応性において問題となり得る主な項目としては、@作業機装着時のトラクターの前後バランス、A油圧揚力、Bトラクター後輪幅に対する作業機幅、C車速と作業速度、D作業機の姿勢、E干渉、F呼称出力と実用出力の差、があげられた。また、各社ともマッチングの実機確認を行い、代表的なものについては装着の可否を把握している。 次にユーザー調査の結果についてみると、この7項目のうち、Dを除いて、すべての項目で事例があげられた。また、機械購入時に、マッチングについて十分に販売店等から説明されていないという指摘が複数得られた。 アンケートのうち、どんな意見があったかをみると、@作業機装着時のトラクターの前後バランスでは、「ロータリに施肥播種機を搭載…質量が大きく、前後バランスが悪い。油圧揚力もぎりぎり。軸距の短いトラクターに、出力を目安にして装着してしまうと前後バランスが悪い」「特に全長の大きい作業機や全体質量が大きい作業機などでは、全体に前が浮く感じがする」「最近のトラクター…軽量のため前後バランスが悪くなり、畦越えや路上走行が恐い」など。 A油圧揚力では、「ハロー…45馬力のトラクターで、3点リンクの揚力が不十分だった。買うときは大丈夫でしょうとのことだったが」「ロータリ+播種機…半日も使うと土を抱き、オイルが温まると上がりにくくなる」など。 Bトラクター後輪幅に対する作業機幅では、「大豆の中耕培土機で、トラクターのタイヤ幅と条幅が合わないので使わないという人がいる」。 C車速と作業速度では、「あるトラクターで、クリープ速度段と1速の差が大きすぎる。ちょうどよいところに速度がない」など。 E干渉についてでは、「リバーシブルプラウ…リヤの窓ガラスを開けたままで、リバーシブルプラウを上げて回転したら、窓ガラスにぶつかり割れてしまった」「レーサー均平器…リヤの窓ガラスを開けたままで、レーザー均平機を上げたら受光部のバーが窓ガラスにぶつかり、割れてしまった」など。 F呼称出力と実用出力の差では、「トラクターに対して大きすぎる代かき機をつけて使用し、機械を壊してしまった。販売店は、購入者のトラクターの出力などは調べずにただ売っていたようだ」「60馬力のトラクターに180cmのロータリを付けた買ったが、トラクターが大きすぎてロータリが傷んでしまった。売る側は装着可能と言っていたが」など。 |
先行して回収された197件について集計した結果、いずれかの理由で相性が悪いと感じたことのある回答者の割合は43%に達し、「作業機の着脱がやりづらい」以外の理由のみの場合でも21%と高かった。回収された148事例のうち「作業機の着脱がやりづらい」以外の54事例については、作業姿勢と干渉を理由としたものが多かったが、すべての項目が理由として挙げられていた。作業機別では、ハロー、ロータリ、モアには作業姿勢、ブロードキャスタには干渉を理由としてあげた事例が多かった。 また、検査データから、トラクターの3点リンクの揚力と前輪荷重分担20%時作業機質量の関係を調べた結果、一般的には揚力が不足する前に前輪荷重分担20%を維持できなくなるため、前後バランス対策が重要であることが分かった。ただし、特殊3点リンクの場合では揚力が大きく下がるという実験結果や、経年劣化があるとするユーザー調査結果もあり、このような場合は揚力にも十分注意が必要であることが分かった。 |
こうしたトラクターと作業機の適応性に関わら項目は、トラクターの機関呼称出力とリンク寸法カテゴリだけでは推定できず、個別に注意する必要があった。これらは、ユーザーに周知されていれば購入時に自ら判断できるものが多く、一方で作業機メーカーが適応性を把握していても、販売現場では十分反映されていない状況であった。このため、この調査結果と各種資料から、購入者の参考となる適応性の資料を検討した。以下は、現在作成中の「トラクターと作業機のマッチング」の一部である。 @適応トラクターの出力(馬力)=一番の基本であり、ほとんどの方がこの点については知っているでしょう。作業機には、その作業機を動かすのに必要なトラクターの出力(馬力)が決まっています。この出力範囲内のものを使わなければいけません。 A作業機取付け時の前後バランス=一般的に、前輪にかかる荷重は、総質量(トラクターと作業機の質量を合わせたもの)の最低20%以上必要だといわれています(前輪荷重分担割合)。最低、この条件を満たさなくてはいけません。特に最近のトラクターは軽量化の傾向にあり、注意が必要です。 B3点リンクの種類と作業機の姿勢=作業機を取り付ける3点リンクには「標準3点リンク」と「特殊3点リンク」があり、両者ではトップリンクが違います。 標準3点リンクには、JIS規格で0・1・2・3形の4種類の寸法があり、特徴は、 Pトップリンクは両側にターンバックル付き、長い P作業機がほぼ水平のまま上下する P作業機取付け後にトップリンクの長さを変えることで、作業機の姿勢を調節できる 特殊3点リンクには、JIS0・1形があり、40馬力未満のトラクターが主です。特徴は、 Pトップリンクは片側だけにターンバックルが付き、短い P作業機は3点リンクを上げると後ろがはね上がる(上げ高さを稼げる) P作業機取付け後にトップリンクの長さを変えられず、作業機の姿勢を調節できない Cオートヒッチの種類=標準3点リンクには日農工オートヒッチ規格があり、JIS0形と1形には「日農工0・1形兼用」、JIS1形と2形には「日農工1・2形兼用」のオートヒッチがつきます。JIS1形は両方が装着できるので、作業機側の規格に合わせて選びます。 特殊3点リンクのオートヒッチには、やはり日農工の規格で「A−1形」「A−2形」「B形」の3種類があり、ある程度の共通化が図られていますが、ある形のカプラは違う形の作業機には付きません。また、ユニバーサルジョイントの連結も同時に行う4Pオートヒッチの場合、PIC軸と接続する方法は規定されていません。したがって、片方を更新する場合は、それが装着可能かどうか、販売店やメーカーに相談し、十分検討してください。 |
D3点リンクの揚力=3点リンクに作業機の質量以上の油圧揚力がなければ、作業機は上がりません。 トラクターのカタログや取扱説明書には、ロワーリンクヒッチ点での揚力が記載されているものもあります。しかし、直装式の作業機では、その荷重はロワーリンクヒッチ点ではなく、その更に後の作業機重心位置にかかるため、ほとんどのトラクターではロワーリンクヒッチ点の揚力よりも小さい質量の作業機しか上げられません(例外もあります)。 E干渉=トラクター純正の作業機以外では、3点リンクの規格は一致していても、作業機を上げ下げするとその一部がトラクターに当たってしまったり、最悪の場合取付けができないこともあります。これを干渉といいます。特に安全キャブのついたトラクターでは注意が必要です。よくある例として、オートヒッチの解除レバーやライムソワーなどのシャッター操作レバーが、作業機を上げたときにキャブと干渉することがあります。トラクター本体やジョイント、ドローバーヒッチなどと干渉しないか、販売店などによく確認してください。 F作業速度=トラクターの速度段は、機種によって様々な設定があります。作業において、作業機側が必要とする速度や「このあたりの速度で微調整がしたい」という希望があれば、それに対応する速度段がトラクターにあるかどうか、調べることも重要です。 また、トレンチャーや畦塗機等では、クリープ(微速)速度段がないと作業できないものもあります。注意して機種選定する必要があります。 |
GPTO=まず第一に、PTO動力を使う作業機では、PTOの回転数や回転方向が決まっています。これを守らないと機械を壊す場合もあるので注意してください。 また、ユニバーサルジョイントの種類や状態も、トラクターと作業機に合わせて適切なものにする主要があります。手持ちのジョイントを使う場合などは特に注意してください。 ジョイントの種類(標準と広角があります)、長さや角度は、取扱説明書に指示された状態にしてください。角度が基準を超えそうな場合(異音、振動が発生します)は作業機昇降レバーのストッパーを使うか、リンクの調節を行うなどして、基準を超えないように対策します。 慣性力の大きな作業機などは、その作業機に準じたセーフティークラッチ(オーバーランクラッチ)やワンウェイクラッチ、シャーボルト付きのユニバーサルジョイントなどを使う必要があります。特に近年、PTOの断続を油圧で行うトラクターが増えており、このような機種では多くの場合、ニュートラル時にPTOにブレーキがかかってしまい、セーフティークラッチ等がないと危険な場合があります。トラクター及び作業機の取扱説明書を確認し、双方の機械に適切なジョイントを選択してください。 H自動化装置=ロータリやハローの自動耕深装置などは、適応するトラクターが決まっています。自動化装置を使う場合は、適応機種に注意してください。 I電源取出し、油圧取出し=電源や油圧をトラクターから取る作業機が増えています。この場合、取出し口(カプラー)が合うかどうか、注意が必要です。完全に合っていないものを適当に使ってはいけません。 Jトラクター幅と作業機幅など=トラクターには様々な輪距やオプションタイヤを持つものが多く、その違いによってトラクターの車幅は変わります。使われる輪距等の設定に応じた幅や作業機位置(畦塗機、フォーレージハーベスターなど)を持つ作業機を選定することになります。 |