14年度の農業白書をみる |
平成14年度の「食料・農業・農村の動向に関する年次報告」(農業白書)では、トピックスに@食品の安全性確保とリスク分析Aデフレと食料消費等の関係B米政策改革大綱〜改革の理念と特徴〜Cイネゲノムの解読Dバイオマス・ニッポン総合戦略などをとりあげ、本文では農業構造改革の動きを追っている。この白書の中から、機械化や生産資材に関連する部分をひろった。 |
農業経済の動向 農業の交易条件は悪化 我が国の農業総産出額は、13年には9兆円を割り込み、ピーク時に比べ約2兆9千億円、2割以上の減少となっている。 13年の農業生産者価格指数(総合)は、野菜、畜産物は上昇したものの、それ以外の品目が低下したことから前年に比べ、0.2%低下した。一方、13年の農業生産資材価格指数(総合)は、肥料、農業用薬剤、農機具等は低下したものの、飼料、光熱動力等が上昇したことから、前年に比べて0.4%上昇した。14年(概算)の農業生産資材価格指数(総合)は、肥料、飼料が上昇したものの、その他の資材が低下したことから、前年に比べ0.8%の低下となった。 このような状況の中で、生産者段階の農産物と生産資材価格の相対的な関係を示す農業の交易条件指数(農産物生産者価格指数/農業生産資材価格指数)をみると、農産物生産者価格指数の低下が農業生産資材価格の低下を上回ったことから、前年に比べ1.6ポイント低下し、交易条件はさらに悪化した。 生産資材価格の引き下げには高い市場占有率を有する農協系統の取り組みが不可欠である 近年のデフレ経済や需給の緩和、輸入品との競合等の諸要因により農産物価格の上昇が見込みにくいなかで、生産者の所得を確保していくためには、経営構造の改革とあわせて、経費の低減、特に経費の大きな割合を占める資材費の低減が不可欠である。 我が国の農業生産資材の小売価格(農家購入価格)の原価構成は、推計によると肥料では製造原価が約6割、残りの約4割が販売業者手数料や物流経費等(包装・荷造費を含む)となっている。これら資材の流通経路をみると、供給は農協系統と商系の複数ルートで行われているものの、肥料の9割,農業用薬剤の約7割が総合農協を通じて農家に供給されており、流通の大宗は農協系統によって担われている状況にある。 一方、総合農協における手数料率は10年前に比べ上昇しており、品目別には農業用薬剤、農業機械に比べ肥料の手数料率が高い結果となっている。さらに、組合員戸数別には、組合員戸数が多い農協とほど手数料率が高くなる傾向にある。また、全国農業協同組合連合会(全農)の供給価格と農家の購入価格を比較してみると、その差は拡大傾向にあり、農協系統の市場占有率の高い肥料では農業用薬剤に比べその差が拡大しているなど、競争原理が働きにくい状況となっている。さらに、商系の利用者は、大規模層ほどその割合が高く、また、理由としても「価格が安い」とする者の割合が高くなっていることなど、大口需要者は価格面を重視する傾向がうかがえる。 このような状況のなかで、製造・流通の関係団体及び都道府県においては、国の指導のもと8年に策定した「農業生産資材費低減のための行動計画」を13年6月に改定した。今後は、この行動計画に即して毎年度、自己点検・評価を行い、その結果を農業生産資材問題検討会に報告し、計画の実施状況を検証・確認することとしている。 さらに、全農においては、14年7月に「生産資材コスト削減の取り組みについて」を策定し、@仕入れ機能の強化、A生産資材コスト最大20%削減の実践、B非効率な物流の改革、C担い手農家・農業生産法人の対応強化に取り組んでいくこととしている。 農業の交易条件の改善を図るためには、生産資材価格の低減が不可欠であり、農協系統は協同組織としての原点に立ち返り、自らの改革への取り組みとして、流通の合理化による経費縮減や事務的経費の削減等を通じたコスト引き下げ、農業資材や資材原料の調達に当たって適正な価格形成を図るためのメーカー等との交渉、より安価な資材を調達するための新たな調達先の開拓等、さらなる努力を図る必要がある。 農業への投資が減少傾向にある 農家総所得が減少している状況下における農業の投資動向を農業総固定資本形成の推移でみると、農業総固定資本形成は7年度にピークに達した後、徐々に減少する傾向にある。さらにこれを7年度から12年度にかけて資本の種類別にみると、土地改良等が5年間で26%減少しており、これが全体の動きに大きな影響を与えている。しかしながら、農機具や植物・動物についても、同期間にそれぞれ16%減少しており、また、農業用建物については、同期間の比較ではほぼ同じ水準であるが、10年度にピークに達した後2年連続で低下し、12年度にはピーク時の約8割の水準となっている。また、田植機.コンバインの販売額についても近年減少傾向にあり、13年の販売額は、7年の6割前後の水準となっているなど、全体的に農業投資が減少する傾向がみられる。 このような最近の農業投資の減少傾向は、特に土地改良等については国や地方自治体における財政事情等の影響もあるが、これまでみた農産物価格の下落や、農外所得等の急激な減少による農家経済の悪化も一つの要因であると考えられ、規模拡大等新たな経営展開の動きに悪影響をもたらすことが懸念される。 米政策の改革と農産物自給の動向 ここでは米政策の改革方向、具体的内容などに触れた後、主な品目の需給動向等について述べ、この中で野菜、果実について機械化に触れている。 野菜では、国際競争に対応しつつ、将来にわたって国内産地の供給力を確保していくため、消費者や実需者から選考される品質・価格の国産野菜を供給できるよう、産地の体質強化をはじめとする生産・流通両面の構造改革を推進する必要があるとして、「このため、各産地において地域の特性を踏まえ、機械化一貫体系の導入等による低コスト化、通い容器(コンテナ)の活用等による流通経費の削減、量販店等の実需者ニーズに対応した契約取引の推進、地域特産品種や有機栽培等の高付加価値化などの目標の実現に向けた取り組みが進められている」としている。 また、果実では「近年では景気の低迷等により卸売価格は低水準で推移していることから、永年性作物という特性はあるものの、樹園地の特性を踏まえた園地の再編・整備、機械化体系及び省力化技術の導入等により、低コスト省力的な果実生産体制の整備が重要となっている」と指摘している。 |