研修担当者研究会から

  総会に続いて開かれた農業機械化研修担当者研究会では、生研機構評価試験部原動機第2試験室の古山隆司主任研究員が「最近の農業機械の動向について」、本会農作業安全推進本部の清水隆調査委員が「農機用低速車マークの普及状況について」講演。千葉県農業大学校研修科機械化研修班の石田時昭主幹が「千葉県における農業機械化研修について」紹介した。
 このうち、農機用低速車マークの普及状況について語った清水氏の講演要旨をみる。

低速車マークの普及状況について

 私の所属は、住友スリーエムの交通安全システム事業部で、この事業部では反射する道路標識などを扱っていますが、私はこのうち、大型トラックの追突防止の担当をしています。特に自動車の安全が私の担当で、それが縁で、農業機械が他の車から追突されないようにということで、低速車マークを推進しています。
 農業機械は、地域により特色があり、一般の人はそれがどういうものなのかわかりません。農業機械の今置かれている道路走行というのは、道の端を車をよけて走るとか、対向車とぎりぎりですれ違うとかが多いと感じています。
 低速車マークの「低速車」とは、ゆっくり走っているという意味ではなくて、時速35q以下の低速でしか走行できない車だと認知させるためのマークです。これは夜光って、後ろの追随する車に注意を喚起させるということ以外に、昼間でもこのマークを付けていたら、低速で走っていますという印です。
 この「低速車マーク」という言葉は、昨年農林水産省から出た農作業安全のための指針にも使われていますので、普通名詞になってきているのではないかと思います。
 形状は、三角形の頂点を切った形をしていて、底辺が25cmのものと、35cmのものがあります。基盤には現在、プラスチックのものとマグネットのものがあります。
 どのようにしてできたかというと、アメリカが最初で、第二次大戦後、モータリゼーションと農業機械の進展により接触事故が増えたことから、1966年に法制化されました。97年に新しい基準になっています。同じようにヨーロッパでも、ECでは87年に採用して、97年に輝度の高いものになったわけです。アメリカでもヨーロッパでもすでに普及していて、装着が義務化されている国もあります。
 アメリカやヨーロッパで用いられている国際基準のものは、日本向けには大きすぎるということで、日本では小型タイプが用意されています。この日本の小型の基準はどうなっているかというと、今年の農業機械化協会のテーマで、これをもう少し明確にしようということが計画されています。
 農業機械の交通事故の増加の背景ということで検討してみると、やはり、一般の運転者から比べると、農業機械は特殊性があります。形、走行速度、それから多様性、いろいろな形をしています。次には、昨今の事業形態として規模が拡大して、公道を走る、夜間の走行が増えています。
 それから、一般の車についていえば、農道が整備されていますから、農道を走る。農道と一般の道路との区別はつけませんので、どんどん入ってくるということになります。また、農業機械が大型化・高速化しているということ。それと、農業従事者の高齢化・女性化などで操作に十分慣れていない、そういうことも考えられます。
 昨年の道路上の農業機械が関連した交通事故としては、死亡事故が15件、人身事故は520件でした。これを、重大事故が1件あるとそれに伴う同じ原因で軽い事故が29件、ヒヤリ事故は300件発生するとするハインリッヒの法則に当てはめてみると、約5000件ぐらいのヒヤリの事故があることになります。
 ところが、これは人身事故なので、物損事故を軽いものとすると、重大事故が530件、軽い物損事故はその約30倍、ヒヤリ事故はそれの300倍ということで、15万件ぐらいのヒヤリ事故があることになります。こういうデータがなかったので、なかなか統計と結びつけるのが難しいところもありますが、実際には何万件というヒヤリ事故が起きているといえるのではないかと思います。
 それを防ぐためにどうしたらよいかということですが、大切なことは、一般車と共存を図ることが必要だろうと考えます。それには、まず農業機械の視認性を高めて、車を運転する人に注意してもらうことです。ですから、自動車並みの灯火、牽引したり作業機をつけた場合には必ず同じような灯火をつけ、反射器もつけるということです。車両の幅から出ている部分は、反射テープですとか、昼間でしたら蛍光のものを使って、突起物、輪郭などがはっきり分かるようにする。それから、低速車マークを付けることです。
 私どもがキャッチフレーズとしています「見られることが安全です」ということがいえると思います。
 皆さんが地元に帰った時に、具体的に機械に装着する相談をメーカーさんと打ち合わせることは、とても大切なことだと思います。農業機械は、作る作物、地域で大きく異なります。つける作業機も異なります。是非、地元の、作物に合った農業機械にどういうふうに低速車マークを付けるかとか、車幅をどういうふうに表すかを、地元にお帰りになって、農家の方に具体的にアドバイスして頂きたいと思っています。