平成14年度農業機械士活動強化全国研究会と農作業事故防止中央運動推進会議を開催

農作業安全運動の推進に弾み

 本会と全国農業機械士協議会は共催で「平成14年度農業機械士活動強化全国研究会」を、引き続き「平成14年度第2回農作業事故防止中央運動推進会議」を2月28日、都内の三井住友海上ビル大会議室で開催した。当日は200名を超す参加者があり、地域での農作業安全への取り組みに一段と弾みをつけた。

●農業機械士活動強化全国研究会

活動活性化へ知恵を

 全国農業機械士活動強化研究会では、小田林徳次会長が、「15年度農林予算で農作業安全、機械研修に係わるものがなくなり厳しい状況にあるが、これを機に機械士の役割をもう一度考え直し、そして更なる活動が展開できるように知恵を出し合って、各地域における農業機械士を活用して頂ければありがたい」と語り、活動活性化のために熱心な研修をと訴えた。
 次いで、事例報告「佐賀県における農業機械士活動と農作業事故防止対策について」(佐賀県農業機械士連絡協議会会長槙昭二郎氏、佐賀県農政部園芸課主査・山本智史氏)、講演「事故発生時における応急手当ての基本技術について」(財団法人東京救急協会指導課長・國府田洋明氏)が行われた。以下に、それぞれの発表要旨をまとめた。


講演要旨

佐賀県における農業機械士活動
佐賀県農業機械士連絡協議会会長槙昭二郎氏

 私の経営は、5haに米、麦、大豆、タマネギを作付けしている。30馬力のトラクター、4条刈りのコンバイン、5条植え田植機などを所有しているが、コスト低減の観点から、コンバインは実演機を購入し、田植機は2人で共同で使用し、動力噴霧機は4人共同という形である。大きな修理は農協にお願いするが、整備センターには部品の購入などで足を運んでいる。
 農業のほか、土木工事の請負も行っており、作業中の事故防止については常に安全を呼びかける立場上、農作業における安全確認においてもいろいろと状況を思い浮かべながら予測ができるということが身に付いた。
 次に、佐賀県農業機械士連絡協議会の概要であるが、昭和63年2月に設立されて今日に至っている。県内に25の機械士会があり、会員数は301名である。
 県では年間100名の農業機械士が認定されているが、その半数は農業大学生で会への加入に結びついていないのが現状である。
 活動内容についてもなかなか目新しいものがなく、活動の特徴を出せないでいるのが現状であるが、しかし、農業機械士の役割は大きく、また、地道な活動であるが重要なことと考えており、今後も頑張っていきたいと思っている。
 会の主な活動としては、県からの委託を受けて農作業安全講習会や農作業環境診断などを実施している。
 農作業安全講習会では、県内25の機械士会のうち、24で実施している。また、過去に事故が発生したところを重点地区として農作業環境診断、改善整備事業を行っており、本年度は南部の芦刈町を対象に、女性、高齢者の農作業の実態や、危険を感じた農作業などを調査し、モデル地区内の危険箇所の調査、安全注意看板の作成、農業機械の安全操作や安全講習会等を開催し、農作業安全に努めた。
 農作業安全研修大会を県とともに開催し、本年度は久留米大学医学部の末永先生に農作業事故を防ごうというテーマで講演をしてもらった。
 昨年度はトラクター耕大会を開催した。男性の部と女性の部を設けて、日頃の農作業で研鑽した技術を競い合うとともに、他の人の素晴らしい技術を見て相互研鑽を図っている。
 また、私の住む塩田町の農業機械士会は、会員24名、女性が2名で、農作業安全講習会を実施しており、それに加えて啓発の一環として農作業安全ポスターを作成した。ポスターの図案は、町内の中学校の美術部の生徒にお願いし、17点の応募があった。
 続いて、女性農業機械士会のレモンズについて紹介する。平成8年に発足し、翌年に農業大学校の研修を受け、全員農業機械士の資格をとり、活動の資金を得るためと自らの技術の向上のために水稲27a、麦210aの作付けを行っている。酒米の受託も180aしている。今後、子供たちの農業教育の一端を担うとしており、塩田町になくてはならない存在となっている。
 農業機械士の活動を通してこれからも、農作業安全と家族ぐるみの健康を訴えていきたいと思う。
 最後に、平成15年には佐賀県で第28回農業機械士全国大会佐賀大会が開催される。皆さんの多くの参加をお願いしたい。

佐賀県における農作業事故防止対策
 佐賀県農政部園芸課主査・山本智史氏

 佐賀県では、農作業事故について、死亡事故以外のケガを把握することも農作業安全に重要とのことから、農協の普通傷害共済、特定農機具傷害共済を用いて農作業事故の実態を把握している。
 農作業事故の年次別発生件数をみると、12年まで増加傾向にあり、12年は農業機械作業に係わる事故とそれ以外の事故を合わせて1028件となり、13年は932件となった。このうち、農業機械作業に係わるものは、おおむね250〜300件で、3割を占めている。死亡事故については、この3カ年で21件の尊い命を失っている。
 農業機械作業に係わる事故の機種別発生件数をみると、12年で300件発生しており、このうち動力草刈機が28%、トラクターが14%、コンバインが13%と、この3機種で54%を占めている。12年は前年より50件増えているが、その増加のほとんどが動力草刈機とトラクターによるものであった。年齢別にみると、60歳以上の割合が上昇傾向にあり、男女別では女性の比率が33%となっている。
 佐賀県における農作業安全対策としては、春と秋の農作業安全運動の実施、農作業安全研修大会の実施、新聞広告での農作業安全啓発、全農家4万戸にパンフレットの配布などを行っている。
 春と秋の農作業安全運動は、春は5月1日〜6月30日、秋は10月1日〜11月30日を安全運動の期間として実施している。春と秋に農作業安全ポスターを関係者に配布するとともに、市町村、農協等を通じて、農作業安全を呼びかけてもらうように要請するとともに、25の農業機械士会でその地区の集落を単位として農作業安全研修会を行っている。中にはケーブルテレビの整備が行われている市町村もあるので、そうした地域ではケーブルテレビを活用して農作業安全の啓発を行うというところもある。
 秋には、農家のみならず県民の多くに農作業安全を啓発するために新聞広告、あるいはチラシの配布をしている。新聞広告は、佐賀県には佐賀新聞と西日本新聞があり、この2紙に掲載している。また、チラシは全農家に配布している。
 県の農業大学校の農作業安全研修については、農業機械士養成研修や農業機械特別研修の中で、実技を中心に農作業安全教育を展開している。特に、農業機械特別研修では、女性を対象とする研修を設けて実施している。近年はまた、汎用コンバインを牽引して運搬する必要から、牽引免許を取得するために受講する人が増えている。農道などで自動車との接触事故や衝突があった場合、免許を持っていない方が悪いとされるケースがあるので、免許を取っているとみられる。
 また、佐賀県経済連では、低速車マークの普及に取り組んでいる。13年に組合員が追突されて死亡事故が発生したことをきっかけに、その農協の組合長が音頭をとり、新規に購入した人には低速車マークを装備して農家に渡そうということで、地区内の低速車マーク装着率が上がっている。佐賀県経済連でも取り扱いを開始し、その結果反響が大きかったということで、平成14年には、経済連が先頭に立って啓発活動を実施することになった。ただ単に低速車マークの装着を行うというのではなく、それを含む「農家自主メンテナンス資材」を提供することにした。この取り組みは好評だと聞いている。



救命手当の重要性(労働事故への対応)
 財団法人東京救命協会指導課長 國府田 洋明氏

 万が一事故が起きてしまったときの対応として、少なくともここまでは覚えておきたいということを話したい。そのレベルとは救急車が来るまで、または医者が来るまでの間、どうしてもやっておかないと命が危ない、または助かっても大きな後遺症を残すというときの、優先順位をつけた応急手当、通常これを救命手当と呼んでいるが、これを覚えてほしい。
 救命手当とは、医療行為ではあるが、医療従事者が来るまで一般住民が行った方が効果が明らかに高いと社会的に認知されているものである。例えば、心肺蘇生法を行うと、救命率が約2倍となるなど効果も大きい。後遺症も最小限にくい止められる。
 心肺蘇生法は、脳死を防ぐためにするもので、脳は酸素がないとすぐにダメージを受ける。だから、救急車が来る前に、人工呼吸で酸素を肺に送り、それを心臓マッサージで脳へ送るということをやっておかないといけない。
 その手順は、第1に、自分が危険な目に遭ってはいけない。まず自分の身の安全を確保してからにする。
 次に大量の出血があるかどうかをみる。もし大量の出血があれば、それを止めないといけない。
 続いて意識の確認をする。「わかりますか」と声をかける。名前を呼んでもいい。耳元で、最初は小さい声で、段々大きくして呼びかける。それでもし反応がないときは、意識がないと判断していい。
 意識がないときは、すぐに周りから人を呼んで救急車をお願いする。結果的に救急車が来たときに元気になっていても、よかったですねでお終いとなる。意識がない、または普通の状態ではないというときは、119番通報をする。
 次は、気道確保である。アゴを上の方に持ち上げ、空気の通り道を作る。枕はダメで、気道を塞いでしまう。
 続いて人工呼吸。マウス・ツー・マウスで行い、相手の鼻の穴を塞いで大きな口で吹き込む。口対口に抵抗感があることも確かなので、そのためのマスクもある。続いて2回吹き込んだ後に、体に何らかの動きがあるかどうかという循環のサインを見る。それがないときは、心臓マッサージを行う。心臓はほぼ胸の真ん中にあるので、そこを押す。手の付け根で両手を使って押す。
 心臓マッサージ15回に人工呼吸2回のペースで行い、これを救急車が来るまで繰り返す。
 続いて覚えておかなくてはならないのが、気道異物の除去である。まず、一番最初に調べるのは、意識があるかないかで、そこが分かれ目である。意識がないときは、心臓マッサージを始める。そのときに口の中を見て、何かものがあれば取る。なければ心臓マッサージを続ける。意識があるときは、「のどにものがつまったの」と聞いて、声が出せない状態なら、下を向かせて背中を叩く。上腹部を圧迫する方法もあるが、これはトレーニングをしてからやった方がよい。
 次に止血法は、傷口を押さえるのが基本である。直接、傷口を、きれいなタオルなどで押さえておけばいい。ビニール袋などで手をガードして、血液に直接触れないようにする。
 救急法は習うより慣れろで、消防署などで講習をやっているので、それに参加して学んでほしい。

●農作業事故防止運動中央運動推進会議

講演要旨

農作業の安全から快適化へ―携帯電話を活用した農作業緊急情報通話装置
農業研究機構・中央農業総合研究センター作業技術部作業労働システム研究室長 小林 恭氏

 日本は欧米に比べて経営面積が少なく、働いているが多い。小さい機械がたくさん入っていて、大きな機械を効率的に使うという状況にはない。安全対策をするにしても、欧米と違って、小さい面積のところで様々な機械が入っているような状態で安全対策を進めていかなくていけないという難しさがある。
 農作業死亡事故は、調査が始まった71年を100とした場合、ほとんど横ばいで推移している。それに対して労災死亡事故は、数からすると3分の1になっている。交通事故も半分ほどになっている。なぜ農業だけがこういう数値になっているのか。
 その中でも、事故の多いのはトラクターである。もうひとつは、60歳以上事故が多いということで、死亡事故のうち約8割が60歳以上となっている。通常の仕事だと、60歳の定年で機械操作から離れたりとシフトされる。ところが農業の場合は、70歳以上でも50%の人が機械操作をしている。だから、40代、50代を対象としたものではなく、他のアプローチをしていかなければならない。
 トラクターでいうと、事故の4分の3ぐらいが、転落・転倒となる。それを防ぐためには、安全フレーム・安全キャブを装着すればほとんどのものが防げるという統計が出ている。ところが日本の場合はそれがうまくいっていない。
 日本の場合、出荷時の装着率は今ではほぼ100%となっているが、全体の普及率からみると、4割までいっていないとみられる。事故調査には4割の装着が反映されてもいいと思うが、それが出てこない。
 農作業の特色として、改良、あるいは安全問題がなかなか進まない理由を考えると、事業主と作業者と同じ場合が多く、家族労働が主であるために、ひとりひとりが我慢をすればすむということがある。それから、屋外での自然環境下で行われるために、天候や気象条件により無理をして作業計画が守られない。もうひとつは、1年中同じ作業をしているのではないということで、ある作業が比較的短時間で終わってしまうために、大変だと分かっていても一瞬で終わってしまうために、改善されないとか、無理をしてしまう。
 農作業の快適化に向けてということでは、まず第1段階は、何をおいても安全性の確保をしなくてはいけない。第2段階として健康を確保できるような状況を作っていくことが必要となる。第3段階として、作業者が疲労感を抱くことなく能率を確保することが求められる。もう1段進んだ段階で環境条件を整えていく。それと、作業・動作、あるいは作業姿勢、長時間労働のようなものにまで目を配るようなかたちで第3段階にもっていって、ようやく第4段階で快適性の確保ということになる。
 次に、携帯電話を活用した農作業緊急情報通報装置について紹介する。
 これは、もう少し早く発見できれば助けられたという話や、緊急通報ができるものはないかという話を受けて、これを付ければトラクターが転倒しないというものではないが、とにかく何かあったときに、携帯を使って自動通報できないか、また、農作業というのは1人で作業していることが多いことから、ボタンひとつで通報できれば非常事態での通報ができる。そういったことで研究を始めた。
 1型は、携帯電話を活用する簡易な方式のもので、転倒事故をセンサーで検出し、自動通報する。それと同時に、身体に異常が起こった場合、ボタンひとつで通報できる。
 通報は音声で、買ったときに名前と、「気分が悪くなったので助けてください」というようなメッセージと、もうひとつは「トラクターが転倒したので助けてください」というメッセージを入れておく。通報先は、6ヵ所全部つながるまでかけ続けるという方式と、もうひとつはどこか1ヵ所でも連絡ができるとそこで止める方式とがある。
 基本的には、傾斜角センサーを付け、転倒判定回路でそれが何秒続いたかで判定した。トラクターで問題なのは、作業条件が悪いのでエラーを起こすと間違った信号を出して、結局使われなくなってしまう。そこで、確実に検出させるようにした。
 今年はその、全体の大きさを小さくした。トラクターの座席の後ろに付けられるようになり、携帯電話はホルダーを付けてセットすればよいようにしている。
 緊急通報装置U型というのは、Tは個人用であるが、JAや普及センター等がシステムを持ってそれを活用するという方式である。通信には、携帯電話のパケット通信を活用する。この場合は、つなぎ放しにしておいても情報を送らない限り、料金を取られないので便利だが、音声通信はできない。GPSを搭載して、位置の特定が可能になっている。位置が把握できることから運行管理にも活用できる。
 センターでは、今どこにいて速度がどのくらいでどちらの方向に向かって作業をしているかがモニターできる。同時に記録もできる。緊急の時は画面が変わり、緊急事態発生のメッセージが出る。サーバーの方に人がいないとダメであるが、どこで誰が転倒したということが表示され、そこへ駆けつけるということになる。
 V型は今年作ったもので、これもセンター機能を有するシステムを想定したものであるが、通信に圃場内無線LAN・フィールドサーバーを使用している。基地局は、緊急事態の発生を確認すると、メッセージが出ると同時に、自動通報でいろいろな人に電話をすることができる。もうひとつは、ネットワークカメラを付けられるようになっていて、事故が起こったときにそこの画像を見て確認ができる。
 フィールドサーバーではそのほかのいろいろなデータを取ることができ、無線LANでトラクターのデータをセンターへ集めることもできるもので、圃場内での試験をさらに重ねたいと考えている。
 これで事故が防げるわけではなく、フレームが必要であり、また、今着いていないトラクターにフレームを着けていかなくてはならないと思っている。


効果的な農作業安全講習会の実施について
 農林水産省農林水産研修所・農業技術研修館 研修指導官 久保田 至身氏

 農業機械で毎年、300人から400人近く、死亡事故が起こっている。その中で、年齢が60歳以上の死亡事故が78%と最も多くなっている。いつも機械を使っているんだから大丈夫、といっても実際は、トラクターで1年間約1〜2ヵ月、コンバインだと約1〜2週間使用しているのが現状である。これだと毎年、農業機械を使うのが初めてのような気がする。長年、機械を使用してきたベテランでも、ハット・ヒヤリを体験している。
 農家の立場になって死亡事故をなくすためには、指導者自らがハット・ヒヤリを身体で体験してもらうことが何よりも大切ということで、今回、実技を中心に事故の原因となるものを身に付けてもらうための研修を始めた。
 研修は5日間コースで実施している。開講式に続いて、正しい服装、悪い服装を学ぶ。農業機械は回転部が多いので、身体にぴったり合った服装にする。故障を未然に防ぐためには、機械の状態をよく知ることである。始業点検を、1日1回欠かさずに運転前に行う。
 刈払機の安全作業では、ビニール紐が巻き付いたときに、エンジンを回転したままにすると、刃が止まっているが、紐を取ると刃が回り出す。周りに人がいないかどうかを確かめてから始動する。
 チェンソーでは、キックバックを避けるため、ハンドルを両手でしっかりと持ち、回転を上げる。
 歩行型トラクターでは、ハウスでのバック作業が多く、そのときには前が重くなる。そのため、レバーが遠くなる。それで止められなくなってしまうので注意する。
 ミニバックホーでは、クレーン作業をしてはいけない。旋回半径の中に人を入れない。フロントローダはアームを持ち上げて移動すると、重心が高くなるので、低い状態で移動する。
 次に、クローラトラクターでは一点支持になっているので畦越えをするとドスンと落ちる。ゆっくりとやれば事故は起こらない。
 乗用型トラクターで固い圃場で耕うんするときは、ロータリを一気に下げると、前へ飛び出す。また、圃場から出るときはブレーキを連結する。
 道路を走行するときは、スピードを落とし、路肩に注意する。また、トラックに積み込むときは、横を高さの4倍とる。そうすれば15度になって、ゆっくり上がれる。クラッチを踏んでもゆっくり下がる。20度にするとかなり急激に下がる。トラックに積んだら必ずロープをかける。トラクターを止めておくときは、油圧ロックをかけ、作業機は下におろす。
 凹凸があって、傾斜が時々20〜30度になるようにしてある傾斜面をトラクターで走ると、小さなトラクターほどはねる。そのときにハンドルを離してはいけない。15度、20度の坂道の走行も、途中でクラッチを踏んではいけないが、そうしたらどうなるかを体験してもらっている。
 コンバインの点検では、必ず仕業点検を行う。コンバインは回転部が多く、点検するときはエンジンを止める。一点支持なので畦越えはゆっくりと行う。越えたときにはねるがハンドルは離さない。
 転倒体験もしてもらっている。また、高齢者の体験セットを装着してトラクターの乗り降りもやってもらっている。指導者の方が、こうしたヒヤリ・ハットの体験をして、危険な行動、作業を理解して、死亡事故をゼロにしていきたい。

●総合検討

連携強化の元年に

 総合討議は、助言者に東京農工大学名誉教授・米村純一氏、生研機構基礎技術研究部主任研究員・石川文武氏、農林水産省生産局生産資材課生産専門官・土屋憲一氏らを迎え、米村氏の司会進行で行われた。
 この中で、石川氏は、事故が減っておらず、今後はその質的な分析をやっていく必要があることを指摘、また、運転免許の問題で、最近は自動車でオートマチックが普及していることから、トラクター走行に必要な半クラッチの技術習得、道路では二駆走行することなどを訴えた。
 北海道からは、低速車マークの法制化の要望があり、千葉県の宮島仙三氏(元全国農業機械士協議会会長)は、農作業安全は他人の問題ではなく自らの問題だとした上で、ユーザーだけでなく販売側など関連業界とも協力して実施する必要性を訴え、農林水産省からの補助金がなくなったら農作業安全運動それ自体もなくなったということがないようにと、語り、これを受けて農林水産省の土屋氏は、地域でいろいろな人の協力を得てやっていかなくてはならないとし、この推進会議も継続していくほか、その他の支援策も検討中だと述べ、関係者が団結する「連携強化の元年」としたいと結んだ。