ホウレンソウをハウス周年栽培
松井 三郎 氏

松井三郎氏は、利根郡昭和村で1・3haの雨よけホウレンソウを周年栽培している。
 松井氏は、昭和42年に就農し、イチゴ、ダイコン、レタスなどに取り組んできたが、大型野菜の価格が不安定なことから、55年にホウレンソウに切り替えた。以来、一貫してホウレンソウのパイプハウスを計画的に増設してきた。年4回栽培で、2坪の冷蔵庫に保存し、周年出荷を行っている。10a当たり収量3・7t、年間販売量40tでコープ東京と契約を結び、安定的な出荷を行っている。

松井 氏
機械装備は、トラクタ3台、ホイールローダ、ロータリ、プラウ、マニュアスプレッダ、土壌消毒機各1台、播種機2台のほか、堆肥舎(共同)、冷蔵庫など。
 今年は、突然の大雪でハウスの4割程が倒壊した。普段なら、ハウスを密閉するだけでハウス内の温度が上昇するため雪が自然にすべり落ちるのだが、今年はハウスの密閉をやり逃したため、雪につぶされた。
 暮れに大雪が降ることはなかなかなく、1月2月なら対処しておくのだが、ほかの仕事もあったのでハウスの対応が遅れた。それでも収穫はできたが、本当は今ごろ収穫するのがいい。松井氏は、「ホウレンソウになって20年ちょっと、ハウスを建てて30年たつが、初めてのこと。いい教訓になった。普通ならこの時期出荷していてるが、今年は相場が良いだけに残念だ」と話す。他の農家では8割くらい潰れたところもあるという。

農機庫には小型の機械が並ぶ
潰れたのと潰れなかったハウスの差は、ハウスを密閉したかしないか。密閉するとハウス内の温度が上昇して雪が滑り落ちるのだが、まだ気温も高かったし、まだ大丈夫だということで一部開けておいたところがあった。すると夜寒くなって雪がビニールに凍りついてしまって落ちなくなってしまう。それで潰れたのがほとんど。「1、2日早く塞ぐ作業していれば経っていればハウス内の温度も上昇していて潰れなかった。あとは支柱を立てる作業で、もう用意はしてあったが」と振り返る。
品種は、「これだ、と自分で決めるのは大体2〜3品種だが、そう思っていながら種苗メーカーさんから新品種を紹介されるとこちらも欲が出て試してみるが、中には良い品種もあるがやはり、新しい品種を多く蒔くというのは危険だ」と話す。定番となっているのが「寒じめ ちぢみほうれん草」。一般的なホウレンソウと違い、葉が縮んだようにシワになっているのが外見上の特徴。冬の寒さに耐えるためミネラルや糖分を豊富に蓄えるので、「味の濃い」ものができる。

特徴あるちぢみホウレンソウ
灌水設備が2〜3年前に整備されたが、その時は、「コックを捻れば水が出るので」、水をやりすぎて大失敗した。水をやりすぎると肥料が逃げるが、この土地特有の肥料の逃げ方というのがあるそうで、、最近ようやく水のあげ方が分かってきたところだという。
 作業は、4月下旬の土壌消毒から始まる。それから施肥、播種。農薬はほとんど使わない。「ホウレンソウの良いところというのは、害虫の数が少ないところ。病気も、べと病が一番怖いが、それも抵抗性品種がほとんどなので、殺虫剤も2回くらいで済む。アブラムシが大発生した時でも、収穫前にもう1回やれば大丈夫」。とホウレンソウの特徴をあげた。
 農薬等は少なくて済むが、「最近は生産履歴をつけなければいけないということで、農協がその仕様書を持ってきたが、それがどうも書きづらい」ため、今年からホウレンソウ部会で仕様を統一して対応することになり、内容を検討している。
 栽培で一番手がかかるのは収穫。作業の8割は収穫で、ほとんど毎日収穫を行っている状況。播種や施肥は1人で1時間もやれば終わってしまう。
 出荷先は、東京・新宿の淀橋青果に15年間出している。そこで担当者と話していて、この産地らしい特徴のある荷造りをしようということになり、「とにかく雑な荷造りだけは絶対しない」というのが約束事。ちぢみホウレンソウなど特徴のある形状なので荷造りも独特で、「包装機械などは使えない」と手作業で対応している状況だ。