機械化農業の生産体制
●機械化の動向●
分割相続による農地の細分化および離農の一方で、農地の買上げにより経営面積拡大の動きがある。農家によっては兼業農家の農地を借りて経営面積拡大を行い、経営を安定させている。都市近郊では兼業化がすすんでおり、ハウス園芸農家も出現している。
直播の機械化・除草機
水田用4輪トラクター
脱穀機・コンバイン
収穫後処理技術


写真13 スリランカの牛車
機械化が進み、牛車による運搬もほとんど見れなくなった

直播の機械化・除草機
 農業機械化研究センターでは、湿田用播種機の開発が行われているが、研究者は日本型の湿田用条播機の研究開発を望んでいる。バラマキ直播の圧倒的な普及で、田植機は当面研究所の研究開発段階に留まり、急激な普及は考えられない。高密度バラマキ直播のため除草作業の機械化は難しい。上記播種機開発と連動した農作業体系の中で開発・普及が考えられる。

水田用4輪トラクター
 全国平均で76.6 %が機械耕ということは、先進工業国並の機械化の進展である。パワーティラーはロータリー式・歩行型の普及が進んでいるが、中国製乗用型(座席車付)の便利さも評価されており、徐々に乗用型に移行すると考えられる。水田の圃場準備作業は、農地支援サービス局やコントラクターによる4輪トラクターの賃耕のほかは、パワーティラーのシェアがほとんどである。今後、タイの稲作機械化の推移と似て乗用型のパワーティラー、水田用4輪トラクターへと移行していくことが推定できる。
 トラクター ハイヤリング サービスで多く使われる4輪トラクターは、水田用で耕盤破壊等を起こさない軽量のものが優先されるべきであるが、農作業の多くは農閑期に農業インフラとして整備されていない道路を農業生産物・資機材やその他の資材を運搬する作業も多く、村落の重要な輸送手段である。水田用トラクターは、運搬作業も考慮した馬力と水田仕様の両者を満足させることが重要である。マハヴェリ地区を含んだ中部以北は営農規模が大きい、和平後の北部開発では潅漑計画が先行しているが、農業労働力が少ないことを前提とし、水田用4輪トラクターを中心とした機械化営農を考慮した潅漑事業とすべきである。

 脱穀機・コンバイン
 スリランカでは一般に、刈取り後2〜3日間圃場で地干され、踏圧脱穀・動力機械脱穀される。
 踏圧脱穀は、籾に泥玉(マッドボール)が混入することで、また乾燥籾はパーボイル処理されるためマッドボールは流通業者からは敬遠され、マッドボール混入籾は買い叩かれている。踏圧脱穀がまだ残っているエジプトやミャンマー等では仲買人の倉庫や精米業者の籾精選の段階で万石や石抜機によりマッドボールが抜かれており、建物から土埃がもうもうと発っているので遠くからでもその所在が分かる。スリランカでは農家の籾販売価格は、銘柄による差はあっても品質による差があまりないため、農家はマッドボール混入に注意しない。動力脱穀機の普及によりマッドボール問題は改善されていくものと思われる。
 動力脱穀機の普及は著しく、コンバインも普及し始めていることより、大規模化に対応したコントラクター用大型普通型コンバインや自脱コンバインの普及が見込まれている。年間利用時間は日本の農家の耐用年数内利用時間以上であり、籾の脱粒性も極めて高い。

収穫後処理技術
 生育期間の短い品種が供給されてきており、米の3期作に対応できる収穫後処理技術の確立が急がれている。農業局は、口頭で、収穫後処理時のロスは20 %以上あると言っている。
 スリランカ・インド・バングラデシュ・パキスタンで広く食されるパーボイルド米は、東西アフリマまで普及している。スリランカでは南部湿潤地域の沿岸地帯を除きパーボイルド米が食されている。旧来のパーボイルド米は、浸漬時の水質が影響して独特の臭いと黄色の色が特徴であったが、国際商品として販売するためのパーボイルド米は、ノンスメル・ノンカラーへ移行している。タイやUSAの輸出精米業者は既にノンスメル・ノンカラー米を輸出している。 また、売渡し時の籾水分が高いことをあまり気にしていないが、売渡した籾がパーボイル処理されることが前提になっていることも見逃せられない。
 一方、短期生育種の普及で潅漑設備が普及し、気象条件のよいスリランカでは米の通年栽培が可能であり、収穫後処理技術の遅れが大きな問題となっている。東南アジアの雨季作・乾季作とは違った問題を抱えている。特に収穫後の乾燥・貯蔵・パーボイル処理・籾摺・精米技術や設備は大きく遅れている。上述の卸売市場の米価格は平均的な数値で、1月26日現在のコロンボ中央卸売り市場での品種別精米価格は表8のようになっている。高級米の「Sadaru Samba」は、日本米よりはるかに小粒の品種であるが、パキスタン産のバスマティより高価である。収集したサンプルを見るとインド米のみ研米機を通した精米が行われていた。
 ローカル種でもその民族の食味にあった銘柄米の価格が高いのは、豊かな国・貧しい国を問わず世界共通である。スリランカは面積的には小さくまとまった国であるが、米のサイズ・形状は多様性に富み、またウルチ米・赤米・モチ米等非常に豊かな米文化があることを理解して収穫後処理技術は取組む必要がある。

表8 品種(銘柄)別精米価格
(コロンボ ペター中央卸売市場 2003年1月26日標本採取・聞取調査)
銘柄(品種) Rs/kg 銘柄(品種) Rs/kg 銘柄(品種) Rs/kg
A1 Nadu 33 Kyakuru Red 38 Lanka White Rice (モチ) 40
Sadaru Samba * 100 Kyakru Samba * 40 Basmati(パキスタン) 90
Pokuru Samba * 60 Samba Red * 45 Kunni (インド) * 40
Suriya Samba * 48 A1 Samba * 50 Kiruwe Samba(インド)* 65
   * : 小粒種