2.社会経済・労働力の推移と動向

近年の農業機械の急速な普及は稲作単作のためだけではなく、また潅漑設備の有無だけでもない。旧計画経済の国々では、強制計画栽培が撤廃されたり、短期生育品種の開発導入によって多作化が進んで来たことも大きく影響している。短い作期の移行の間に農業機械なしでは営農ができないことも普及を拡大している。作期間の主要な農作業は、脱穀調整作業と次作の圃場準備作業である。次作が雑穀等の場合は、不耕起営農がかなりのシェアで行われている。
タイの中央平原ように潅漑設備が整い、脱穀機やコンバインよる生脱穀が行われる地域では、2年5作が可能である。収穫作業が終わると農家は圃場に残る稲藁を野焼きして、次作の圃場準備へ移る。圃場に稲藁がないためデイスクプラウ耕からロータリー耕の復活が見られる。

乾季末のパワーティラーによるロータリー耕
(ミャンマー 降雨2回 後)
直播(ばら蒔き:Broad-casting)  (タイ中央平原)
労賃の高騰や労働力確保が難しくなり、多くの国が直播。
移植は、インドネシア・フィリピン・ミャンマー等に限定さてきた。
動力(農業機械)によるおおよその圃場準備作業時間は、パワーティラーで半日〜1日弱/ha、4輪トラクターで半日弱/ha、一方、畜力(2頭曳き)では10日〜2週間/haで、1頭曳きの場合は2週間/ha以上はかかる。農業機械の作業性の高さは明確である。
  工業化の進展の進んできたタイ・インドネシア・フィリピン・スリランカ等では、農作業労賃の高騰とともに兼業農家も増えており、農業後継者不足が社会問題化されている。これらの国では農業人口が既に50%を切っている。しかし、在農村労働力は依然余っており、厳しい農作業を嫌って農業に就業せず、農業労働力は不足しているのが現状である。
  経済開発の遅れた旧計画経済国では、農業人口は依然70%前後の高い水準である(表2‐1 2001年の農業人口を参照)。一方、潅漑施設の建設が進んできている地域では、米・米・雑穀や園芸作物又は米の2作半〜3作等の機械化営農が行われてきている。
表2-1 2001年の農業人口
項  目 千 人 項  目 千 人
インドネシア 全人口 214,840 バングラデシュ 全人口 140,369
農業人口 93,312 43.40% 農業人口 76,722 54.70%
全就業人口 104,777 48.80% 全就業人口 71,395 50.90%
農業就業人口 49,955 23.30% 農業就業人口 39,023 27.80%
全就業人口比 - 47.70% 全就業人口比 - 54.70%
フィリピン 全人口 77,131 インド 全人口 1,025,096
農業人口 29,883 38.70% 農業人口 545,254 53.20%
全就業人口 32,217 41.80% 全就業人口 451,384 44.00%
農業就業人口 12,541 16.30% 農業就業人口 267,125 26.10%
全就業人口比 - 38.90% 全就業人口比 - 59.20%
ヴィエトナム 全人口 79,175 スリランカ 全人口 19,104
農業人口 52,991 66.90% 農業人口 8,788 46.00%
全就業人口 41,657 52.60% 全就業人口 8,662 45.30%
農業就業人口 27,881 35.20% 農業就業人口 3,916 20.50%
全就業人口比 - 66.90% 全就業人口比 - 45.20%
ミャンマー 全人口 48,364 タ  イ 全人口 63,584
農業人口 33,806 69.90% 農業人口 30,631 48.20%
全就業人口 26,157 54.10% 全就業人口 37,858 59.50%
農業就業人口 18,284 37.80% 農業就業人口 21,076 33.10%
全就業人口比 - 69.90% 全就業人口比 - 55.70%
ラオス 全人口 5,403 マレーシア 全人口 22,633
農業人口 4,123 76.30% 農業人口 3,841 17.00%
全就業人口 2,699 50.00% 全就業人口 6,014 26.60%
農業就業人口 2,059 38.10% 農業就業人口 1,736 7.70%
全就業人口比 - 76.30% 全就業人口比 - 28.90%
カンボジア 全人口 13,104 出典: FAO SATA Database 2002
農業人口 9,181 70.10%
全就業人口 6,601 50.40%
農業就業人口 4,599 35.10%
全就業人口比 - 69.70%