生研センターと新農機(株)は7月16日、宮城県大崎市の三本木公民館および(株)三本木グリーンサービス圃場で、平成21年度最新管理作業機
に関する現地セミナーを開き、市販化が決定した低振動型刈払機、可変施肥装置(追肥用)、高精度畑用中耕除草機(トラクタ用)及び環境保全型防除機(乗用管理機用)の4機種の概要説明と実演を行った。これには約160人が参加し盛況で、現場の省力管理作業に対する関心の高さがうかがえた。
次世代緊プロ開発機4機種を紹介
同現地セミナーは、大崎農業改良普及センター、(株)三本木グリーンサービス、井関農機(株)、小橋工業(株)、(株)共立、初田工業(株)、(株)東製作所、(株)丸山製作所、ヤマホ工業(株)の協力を得て実施したもの。
4機種は、次世代型農業機械等緊急開発事業において、生産コスト低減を図りつつ、肥料の削減、環境負荷の低減、安心安全な農産物生産になどに寄与する農業機械開発に向け、企業との共同開発したもので、平成20年度末から21年度当初にかけて、実用化促進事業に移行し市販化されることが決定している。
セミナーでは、主催者を代表して、農研機構・生研センターの行本修理事、新農機(株)の安橋隆雄社長、来賓として農林水産省東北農政局生産経営流通部の藤村博志部長がそれぞれあいさつした。
生研センター研究員による開発機の説明は、低振動型刈払機は岡田俊輔氏、可変施肥装置(追肥用)は林和信氏、高精度畑用中耕除草機(トラクタ用)は後藤隆志氏、環境保全型防除機(乗用管理機用)は宮原佳彦氏が行った。
低振動型刈払機は、グリップ内部とハンドル取付部に防振機構を設け、ハンドルを補強することにより、ハンドル振動を手や腕の振動障害を防止できるレベルまで低減した。防振機構による質量の増加はわずか0.7kg。エンジン回転速度7000rpm(常用回転速度)での無負荷時ハンドル振動(ISO22867に準拠)は、最終試作機の対照機(試作ベース機)より、左ハンドルで46%、右ハンドルで34%低く、市販44機種の中で最低だった。また、牧草地等で実作業を行ったときのハンドル振動は、同対照機に比べ20〜47%低減し、1日当たり8時間使用しても振動障害が生じない基準値をクリアした。市販予定機のハンドル振動は、さらに低い値だった。
可変施肥装置(追肥用)は@調量作業をすることなく、施肥量(現物kg/10a)と肥料のかさ密度を入力するだけで、車速に連動した施肥作業を±5%程度の精度で行うことができる。また、簡単なボタン操作で作業しながら施肥量を増減することができるA新型繰出機構により、ロール駆動軸の回転方向の切り替えと回転数の変更を組み合わせ、1〜150kg/10aまでの幅広い散布量に対応B生研センターで開発された農用車両用作業ナビゲーターを接続することにより、収量情報や葉色情報などから作成した施肥マップに基づく施肥を、全自動で行うことができるC散布幅10m仕様の圃場作業量は約1.2ha/時で、15m仕様ではさらに高い能率で作業を行うことができる。
高精度畑用中耕除草機(トラクタ用)は、2対のディスクにより中耕除草と培土を行う機械で、高速作業が可能で能率が高いこと、高水分土壌でも土の練り付けが少なく適期作業が可能なこと、土壌の反転作用が強く雑草防除性能が高いこと、大きな石のある圃場でも作業できることなどの特徴がある。4〜6km/h程度の高速作業が可能での作業能率は従来機(ロータリ式中耕除草機)の1.5〜2倍、面積あたりの燃料消費量は従来機の半分程度。また、土を反転させる作用が強いことから雑草防除性能が高く、従来機に比べ収穫前の雑草量(乾物重)は、条間で半分程度、株間で6割程度だった。さらに、高水分な土壌でも土の練り付けや圧縮が少なく、砕土が良好なため、このような土壌条件で作業した場合の大豆収量は、従来機に比べ15%程度増加した。
環境保全型汎用薬液散布装置の特徴は、@水稲が立毛中の水田内を走行して、薬剤(液剤)の散布作業を行う「乗用管理機」に搭載する方式のブームスプレーヤA作業速度連動制御装置を搭載しており、コントローラからボタンひとつで液剤少量散布(散布量25L/10a、少量散布用ドリフト低減型ノズルを装着)、または、多量散布(散布量100L/10a、多量散布用ドリフト低減型ノズルを装着)を高精度に行うことができるB開発機は、ドリフト低減型ノズルU型またはV型を標準で装備。U型は、ドリフトし易い微細な噴霧粒子が発生し難いドリフト低減効果を重視したノズル。また、V型は、前後に45度程度開いた2頭口それぞれからドリフトしにくい粗大粒子(前側噴口が後側よりやや細かい)を同時に噴霧する構造であり、作物上部(水稲の穂など)への薬液付着性能を重視したノズル。
効果は@慣行と同じ条件(農薬の種類、希釈濃度、10a当たり散布量)で散布作業を行いつつも、ドリフトと作業者被曝を大幅に低減することができるため、ドリフト防止対策としてこれまで必要となっていた、遮蔽物の設置、作業日程の変更や調整、あるいは、作業能率を犠牲にした作業を行うこと無く、農薬のドリフトによる近隣への危被害発生リスクを軽減できるA遮蔽物の設置等のドリフト対策において必要であったコストを削減できるB作業履歴情報記録装置は、散布開始から終了まで実散布量等の情報を自動保存する―など。
三本木グリーンサービス圃場で実演
講演会に続き、三本木グリーンサービスの大豆圃場における実演会では、まず同社の澁谷誠司代表が、作付けの状況などを説明した。澁谷氏は、高精度畑用中耕除草機(トラクタ搭載式)を試用した感想について、高能率や、雨あがりなど圃場が悪条件でも作業できる点などを評価した。
実演は、高精度畑用中耕除草機(トラクタ搭載式)=小橋工業、可変施肥装置(追肥用)=井関農機、初田工業、環境保全型防除機(乗用管理機用)=共立、丸山製作所、ヤマホ工業、低振動型刈払機=丸山製作所の4機種(5型式)が行われた。
低振動型刈払機は8〜9月に本格生産を開始。 可変施肥装置(追肥用)は今年春から市販しており、60台の普及見込み。環境保全型防除機(乗用管理機用)は、今年度中か来年度始めに市販化予定。
セミナーには、東北各県やJAの普及担当者や農家など、予定より多くの参加者があり、それぞれに作業後の圃場を熱心に観察するなど、関心の高さを示した。
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