地域でできたナタネから油を絞る
 地域でナタネを作った場合、地域内で搾油をしていきたいという要望が多数出ています。そのメリットとして、自分たちの地域で作ったナタネを自分のところで絞ることによって価値を高め、地域内で循環して、地域ブランドができるということがあります。それから、油かすが、油はナタネ1kg当たり4割入っているのですが、油を全部穫れずに3割ほど取るとしても、カスは7割出てきます。搾油業者はそのカスを売って儲けていてカスをなかなか返してくれないとか、カスを戻すに当たっては搾油の値段がかなり上がる、そういった話もちらほらあります。そういった中で、カスを地域内で循環利用することによって、副産物のカスケード利用ができます。 また、搾油施設の方でも製品にできないタイプも多数穫れていると思います。そういったものを捨てるのではなく、油として絞ってBDFなど燃料の原料として使っていければ、地域に根ざした搾油システムの価値が出てくるのではないかと思います。
小規模施設での搾油の現状
国内の小規模搾油施設の現状がどうなっているかというと、昭和32年にナタネの作付面積は26万haあったのに対して、平成17年には774haとかなり減ってきています。その現状と同じく、搾油機の台数もかなり減って、2003年では小規模の搾油機は探すのが大変なくらいになっているということです。搾油工場がだんだん大型化して、最近では、港近くに大きな製油工場を造り、輸入してきたナタネをタンカーからサイロの方に入れて直接絞って商品化しており、巨大な食品工場化しています。ですので、現在日本では、小規模な搾油技術は発展が遅れているというのが現状です。 その小規模搾油施設がどのような油を生産していくかというと、国内であれば、そういう規格はないのですが地油です。農林規格では、なたね油として区分されています。その規格はかなり緩くて、独特の臭いですとか、特有な色であるとか、水分、酸化に注意すれば、規格に合った油が作れます。 ヒマワリの場合は、国内ではほとんど生産していないため、海外で絞った原油を輸入して精製しているということもあり、地油的な規格は日本ではないのですが、精製したヒマワリ油については規格ができています。 サラダオイルを作る一般的な工程は、原料を選別して、前処理として、皮をむいたり乾燥しすぎている場合には水分を上げたり、加熱をして水分を下げたりというコンディショニング、要は加熱の一種ですが、その後、つぶしたり細かく砕いたり前処理を行ってから圧搾します。この圧搾は、それほど絞るわけではなく、ある程度絞り出したケーキをヘキサンのような溶媒を使って抽出しています。圧搾ケーキに残る油分は10%以下になるように絞っているそうです。抽出したものを目的に合わせて精製し、濾過、脱ガム、洗浄、脱色、脱臭、脱酸などをして油として売り出すということです。 小規模の施設では、そうしたことはせず物理的な圧搾のみで絞っていかなければなりません。乾燥した後、原料を物理的に絞るだけで黄色い油をとることができます。これで、なたね油の規格に合うものができるので、これを植物油として売るという流れになっています。 こういった小規模施設に求められるものは、やはり絞る効率が良いこと、貯蔵性が良いこと、方法が簡単であるといったことがあります。
中央農研での搾油の流れ
中央農研での搾油は、圃場で乾燥したナタネを唐箕選程度で精製して、搾油機にかけ、出てきた圧搾粗油をタンクに入れて、1、2週間程度自然沈下させ、上澄みだけをフィルタープレスに通して作っています。それを地油として使う、または、目的に合わせて精製して、半精製サラダ油などとして使いますが、私どもでは、バイオディーゼル燃料に変換して場内のバスに使用しています。 圧搾カスは、瓦状の、通常ペラカスといわれているのですが、これではハンドリング性が良くないので、すりつぶして粉にしてペレタイザーのようなものでペレット化して、試験に使用しています。 搾油に関していろいろ調査し、工夫しているところをみますと、まず粗選別で、土砂用の篩い機の網を改造して使用しているという例がありました。これには円筒式の米選機などでも流用することができます。 乾燥は、エキスペラーで搾油する場合は水分が8%ぐらいがちょうど良いといわれています。少し前までは、ナタネに対応した乾燥機があまりなくて、熱風路に種子が滞留してしまうという問題もあったのですが、最近は網を交換して滞まらないようにしています。また、八層方式の乾燥機ですと滞留せずにできます。一部やっていることですが、循環式乾燥機の廃塵ファンを停止させて、廃塵として種が飛んでいかないようにする工夫もありました。 圧搾は、昔ながらの玉締め方式をケージプレスといいますが、円筒の中に種を入れて、ジャッキのようなもので直接圧力をかけるという方法です。きれいな油が絞れるといった利点はあるのですが、回分方式なので生産効率が低いという短所もあります。
エキスペラー方式での搾油
それに対して、エキスペラー方式は、連続的に種を投入して、カスも油も、連続的に出てくるもので、非常に生産効率が高い。ただ、摩擦熱が大きいため、種の微粒な粉とか滓が油に混ざるので、その後の濾過が必要となります。 エキスペラー圧搾で注意しなければならないことは、国内の搾油機ですと、種子を事前に加熱して油を出しやすくしなければならないということです。70度,100度,120度、135度、145度と段階的に加熱をして搾油をした試験結果では、80度、85度が一番温度的には良いとのことでしたが、120度ぐらいまで上げても大丈夫ではないかという試験結果を得ています。逆に135度、145度ぐらいになると、焙煎臭、コゲ臭が出てくるといった問題がありました。ただし、何でも120度に上げればいいということではなく、その後の味、色、栄養価値とかに合わせて温度を変えていく必要があると思います。 エクスペラーで一番問題なのは水分で、搾油するときに一番良いのは6〜7%です。それ以下では摩擦熱が上がりすぎて種が少し焦げてきます。これは、搾油機によって違うので、その搾油機に合った水分があると思います。それでも、10%、11%くらいになってきますと、とたんに搾油効率が下がってきます。水分が多いと摩擦熱が十分に上がらず、種から油がとりきれないといったことで下がってきます。
コールドプレスマシーンの利用
こうした点を解消するため、中央農研はコールドプレスマシーンという搾油機を使用しています。これは、種を加熱しないで常温のまま絞ることができる搾油機です。特殊なものはないのですが、中のスクリーンや仕切りの部分がかなり頑丈にできていて、圧力が上げられるようにできています。こちらも水分を7〜8%に調節しています。この搾油機でナタネを絞った場合、出てくるカスに含まれる油分が8%くらいになっているので、油分が43%の種ですと大体35、36%ぐらいの油を絞ることができています。
精製濾過は、あまり急いでも、ということで、1、2週間程度タンクの中で自然沈澱させています。 できた油の、酸価に関しては規格ぎりぎりですが、海外では、コールドプレスという油の枠組みがあり、これは酸価が4以下であればよいということなので、国内でもコールドプレスという規格ができれば十分商品化ができます。 その後精製するのですが、どのような油にしたいかという目的に合わせて、脱ガム、加温、脱酸、脱色、脱臭、冷やしていってロウ分を析出するウィンタリングなどを、使用目的に合わせて選んでいけばよいと思います。
圧搾ケーキをペレットに
圧搾ケーキの利用ですが、ナタネ、ヒマワリを二毛作で1ha作ると、油として1700L、絞りかすとして3400sとれます。絞りかすは肥料として、なり価値があるのですが、もったいないので、燃料として使ったらどうなるかという研究も行っています。ナタネの絞りかすは油分を含んでいるだけあって、発熱量は木質よりちょっと高いという結果です。これを、リングダイ式ペレタイザですとかフラットダイ式ペレタイザで、ペレット状にして、ボイラーでお湯を沸かして、熱として使います。熱量に換算すると1ha当たり71.4GJ、灯油に換算すると1950L、大体2000L近くの熱として使えます。ただ、肥料、飼料とした方が高く売れるので無理に燃料にすることはないのですが、そうした用途も考えられるということです。
バージンオイルをBDFに
今後の課題ですが、バージンオイルをどうやって利用するかということも考えています。というのは、粗選別と唐箕をかけただけの油の中には、かなり未熟な種子が混じっています。実際に絞ってみると、未熟粒からクロロフィル等の色素が出てきて、褐色がかった油ができます。その種を更に1.8mmの篩いでふるってかなり上質の種だけを集めて絞った場合には、かなり澄んだ黄色い油が出てきます。今、かなりいろいろなところで油が絞られていることから、商品価値をどう高めるかということがあるのですが、良いものだけを絞って価値を高める。そして残りの赤種とかはまた別に絞って、バージンオイルとして燃料として使っていけばよいのではないかと考えています。 そういったバージンオイルを燃料にする場合、貯蔵性が問題になってきます。貯蔵でどのくらいダメになるかというと、計算の結果、35度でタンクに入れたままですと45日間くらい、20度で141日、冷蔵庫などに入れれば、1.2年、1.6年持つということですが、営業的には冷蔵庫に入れるとかは考えられないので、35度で何とか保つようにと考えていかなければなりません。油の中にクロロフィル等があると、貯蔵性は逆に伸びる方向にあります。ということなので、赤種のような未熟な種は燃料とすることで、貯蔵性も良く使えるのではないかと、研究を進めているところです。
|