 ナタネ、ヒマワリの栽培管理技術ということで、栽培の機械化、その問題点、解消法をお話しいたします。 ナタネ、ヒマワリと並列していますが、ナタネの方が格段に作りやすくなっています。耐湿性も強いし、種もF1ではない、毎年再生できる種が手にはいるということがあります。ただ、ヒマワリも食味がいいというか、現場で搾油している人の話では、胃もたれしにくいという話を聞きますので、捨てたものではないと思っています。
品種選定について
栽培ですが、第1として、品種選定があります。 ナタネは、アブラナともいいますが、Brassica napus、Brassiia rapaの2つの種類があります。rapaというのは、昔の朝鮮種、あるいは赤種種といわれているもので、収量は低いのですが、成熟期が早い、それから、湿害に強いということがいわれています。ただ、収益が低いものですから、Brassica napusの方が主に使われています。 皆さんnapusを使っているのですが、国内品種、従来の品種は、エルシン酸を含んでいます。エルシン酸というのは、WHOで心臓病に良くないということをいっている脂肪酸です。ですので、これを含まない海外品種が入ってきて、国内の品種がだんだん減ってしまったという経緯があります。ただ国内でも、エルシン酸を含まない品種を東北農業研究センターで育成しており、例えば、キザキノナタネは、体も大きいですし、北海道などでも力を発揮するのではないかと思っています。 キラリボシは、体は小さいのですが、若干早生で、関東地方などの梅雨が来る地方では適しているのではないかと思います。それからもう一点、種子のグルコシノレート含量が低いということがありますので、キラリボシは絞りかすを飼料、エサとして使えるということがあります。この2品種がお勧めではないかと思っています。
ヒマワリについては、品種は、国内の種苗会社で花き用品種が非常に多く出ています。ただ、種が小さいので、搾油には向きません。実際には油糧用の品種を使うことになります。それからヒマワリが導入された1980年代頃には自殖性の品種が多かったのですが、その後、品種は進歩しており、ハイブリッドの性能のいい品種が出ています。ただこれは自家採種できませんので、毎年種を購入する必要があります。 国内の品種は、トラディショナルというリノール酸主体の品種があります。これは、主に寒い地方向けで、関東地方で作ればオレイン酸が多くなるそうですが、リノール酸をとりすぎても体に悪いということで、アメリカの方では、だんだんオレイン酸を多くする育種が行われています。例えば、中程度のオレイン酸、40%程度のリノール酸とか、80%程度のハイブリッド等の品種が、最近出てきています。 国内で購入できる品種としては、私どもが使っている春りん蔵、これは、アメリカの63N80でオレイン酸が中程度の品種を輸入しているものです。国内の種苗会社で作っているハイブリッドサンフラワー、これは、リノール酸主体ですが、関東以西で作る分には、問題なく作れると思います。ほかにノースクイーン、ヒマワリ農林1号がありますが、これは採種が追いついていないため、一般には流通していないという状況にあります。
生育量の確保について
栽培面の話として、生育量を如何に確保するかということがあります。 まずナタネですが、ナタネは越冬植物ですので、北海道では春播きもあり得るのですが、冬の寒さを如何に乗り切るかということが問題です。関東地方の例では、1月の霜柱による凍上害、株の凍み上がりがあったり、マイナス5、6度という低温が来て枯死することがあります。ですので、余り遅く播くとダメであるということで調べました。 10月10日から1週間おきに10月21日まで、播種をして、年末寒波が来る前の葉の数、乾物重を見ました。そうしますと播種期が遅くなると、急激に乾物重は落ちてきます。限界としては、10月の下旬、24から30日ぐらい、平均気温が15度程度の時期までに播きたい。それ以降になると、枯死、凍上の影響が大きくなると考えられます。 ヒマワリの播種時期ですが、いつでもいいのではないかと考えられるのですが、実は、ヒマワリは、播種時、それから生育が遅くなるほど、湿害に弱いといわれています。私どもも、花が咲いてから水をかぶってしまったヒマワリで、1週間以上早く枯れあがってしまった経験があります。ですので、梅雨のある地域では、梅雨の時期と如何にヒマワリの生育を合わせていくかということが重要になってきます。 なるべく播種から1ヵ月以内に梅雨を乗り切りたい。それくらいであれば、何とかダメージを受けないで済むということで、6月の中、下旬頃にヒマワリも播いていきたい。それ以前に播きますと、春先まではいいのですが、その後急激に生育が悪くなる恐れがあります。
栽植密度、施肥について
栽植密度ですが、まずナタネは、1kg、2kgを散播にしたりしますので、栽植密度、密植による減収というのはないと思います。ヒマワリの場合は頭頂花で、花が20cmくらいになり、その花の大きさが粒の数と直結しますので、花を大きくする工夫がいります。ということで、株間を20cm程度、できれば30cm程度は確保したい。 それから、生育確保に重要なものとして、適肥があります。まず、基肥は必須です。ナタネですと1粒の重さが5mg程度と非常に小さいので、窒素、栄養分は必ず要ります。ナタネの根は、肥料やけをしやすいということで、全面全層施肥をする、あるいはちょっと離してやる、あるいは施肥量を少なくするというように、肥料やけをしないで生育を確保する工夫が必要です。 ナタネの生育経過は、3月から4月にかけて、乾物重が非常に多くなります。その前の時期、1月の下旬から、花が分化し始めていますので、この3月頃に窒素をやると、乾物重の増加にも寄与し、葉の窒素が濃くなって光合成量が多くなります。それから、花をつくるときには細胞が分裂しますので、核酸とか、タンパク質、窒素を多量に必要とします。その助けになるということで、3月頭の追肥が有効だと思います。これは関東のことで、場所によって時期は変わってきます。 ヒマワリも原理としては一緒です。基肥は必要ですし、播種後3週間程度と非常に早い時期に花ができ始めます。ですからこの時期に窒素を与えたい。播種後4週頃に窒素を施肥することで、花が大きくなる、葉が大きくなるというプラスの影響が期待できます。ただやりすぎると、今度は、花が重くなって垂れ下がってきますので、収穫しにくくなるということもあります。
雑草、病害対策について
ヒマワリを作っているときに菜種が生えてしまったケースもあります。ナタネもヒマワリにも適応する除草剤としては、トリフルラリン剤があります。ただこれは、イネ科雑草が対象で、広葉に対しては効果が薄いといわれます。ですので、どのように作っても、広葉雑草というのは出る可能性があるということで、その場合には、早め早めの機械除草しかないだろうというのが今のところの結論です。 また、ナタネもヒマワリも菌核病という病気が出てきます。これはどちらの作物にも出ますし、開花期に雨が来ると激発するという状況です。それが出るときには、転換畑でしたら、稲と輪作することでかなり防除できますので、稲との輪作も重要だと思います。 生育が確保できるとしても、株立ち、個体数が確保できないと収量は頼りないものがあります。ナタネ、ヒマワリは油糧作物ですが、油というのは酸素がないと分解できません。水をかぶってしまって種の回りに酸素がないと発芽がかなり阻害されます。それを何とかしようというのが、小明渠浅耕播種機で、これで地表排水を図っています。 また、砕土も大切です。極端な事例で、土塊が刈り株より大きくなってしまうと、種は、土壌と密着することができません。すると土と密着できずに発芽できなくなります。 ヒマワリでは、空梅雨というようなときに播きますと、播いて、覆土が不十分、鎮圧不十分、あるいは砕土が不十分というときには発芽不十分な状態になります。ですので、ヒマワリの場合も事前に1回耕うんをして、それから小明渠浅耕播種機で播くなどの工夫が必要になることもあります。
収穫・調製について
種が取れたとしても、コンバイン収穫の時にロスが多くなりますと、200kg穫れるものが100kgになってしまうということになります。緑の莢が残っていたり、黒い種の中に青い種、あるいは赤い種が入っていたりすると、莢の部分が確実に収穫ロスになりますし、青い種、緑の種、赤種など品質の悪い油が穫れるものになってしまうということで、一呼吸おいて、我慢して収穫する必要があると思います。 今年収穫したのは、茎も茶色、花も茶色でした。ここまで乾燥すれば大丈夫です。これであれば、乾燥調製も問題なくできます。そのようなことで、収穫も我慢して行いたい。 もう1点、ナタネは秋作物に影響を及ぼすことがあるということをお話しします。 これは特に極端なケースなんですが、ナタネ後にヒマワリを作った場合、秋作の生育が悪くなることもありますし、秋作物の株立ちが落ちる、株立ちが激減することもあります。これは常に出るわけではありませんし、非常に捕まえにくい現象です。いろいろな文献から見ますと、どうもグルコシノレートの影響ではないかと思われます。グルコシノレートはわさびや芥子の辛み成分ですが、分解することによって揮発性物質となって、それが、雑草種子や病原菌を殺す。それから、秋作に影響を及ぼすということがいわれています。 残渣を鋤き込んだ場合は鋤き込み後2、3日にピークが見られますので、ある程度前に残渣を鋤き込んでから播種するということが必要です。それから雑草ナタネからもイソチオシオネートが出ますので適宜、防除することも必要かと思われます。 栽培上の留意点をまとめますと、とにかく湿害に注意してください。ヒマワリでしたら、生育全般ですし、ナタネ、ヒマワリは、播種時の湿害に気をつけてください。それから、株立ちや生育を確保するために砕土を十分にする、播種密度や施肥を考える。それから、収穫は我慢して、水分が落ちてから収穫してください。それと、栽培とは直接関係ないのですが、秋作物への影響を軽減するために一工夫していただきたいと思います。
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