バイオディーゼル燃料利用推進に向けた取り組み
日本有機資源協会専務理事・今井 伸治氏

 日本有機資源協会がバイオマス総合展併催セミナーとして実施した「バイオエネルギー利用の現状と課題〜バイオマスタウンへの展開〜」の中で、同協会の今井専務理事が「バイオディーゼル燃料利用推進に向けた取組み」について報告した。報告では、同協会に事務局を置く全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会が実施したバイオディーゼル燃料取り組み実態調査の結果について説明。課題として法律・税制等の規制や原料の安定供給などがあげられたことなどを指摘し、バイオディーゼル燃料の品質について、協議会として規格を示すことを考えていることなどを話した。ここでは、その要旨を紹介する。(文責=本会)

 全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会について
今井 伸治氏
 日本有機資源協会(JORA=ジョラ)が事務局をしている全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会は、今年3月に立ち上げた協議会で、会長は京都市長の桝本ョ兼氏です。バイオディーゼル燃料は非常に早くから、あるいは大規模に京都市が取り組んでいます。ゴミ収集車、市バスなど相当の数が実際に動いており、立派なプラントを造っているということで、桝本市長を会長にしています。
 目的は、1つは品質規格やガイドラインを作成しようということです。というのは、あちこちでバイオディーゼルの製造が行われているのですが、心配しているのは、不具合が起きて、バイオディーゼルの評判が悪くなると、バイオマス利用の推進にも響くということです。そこで、それぞれ知恵を持ち寄って、品質の事故がないように、不具合のないように、円滑に推進できるようにという思いがあります。
 2点目は税制面です。バイオディーゼルは軽油と混合した場合、32円10銭かかります。地球環境、地域資源、あるいは地域の産業、地域農業に役に立つのですから、この際ゼロにしてほしいということです。そうなると価格比較性も良くなって、バイオディーゼルがさらに進むだろうということで、制度面の障害解消を検討していこうということです。
 3点目は、普及啓発活動をやろうということです。

 バイオディーゼルの実態を調査

バイオディーゼルはあちこちで作られていますが、実態はどうなっているのか全体を調査するのはこの本協議会が初めてです。実態を調査して、会員の皆さんがどういう課題を持っているのかを把握しました。
 会員は、現在80会員ほどで続々と増えているところです。バイオディーゼル燃料の製造装置を造っているメーカーの方、これからバイオディーゼルに取り組みたい方、あるいは一般の市民の方、あるいは地方自治体の方が入ってきています。
 調査対象は市町村、協議会の会員、それ以外に、バイオディーゼル燃料を製造しているというところにもアンケート調査をしています。なるべく広く調査対象にしたのですが、全部だとはいいきれません。そうしたところに昨年の実績を調査しました。
 調査結果では48事業者から回答があり、回答者は地方自治体が22で46%を占め、民間企業が21、44%、それからNPO法人が4、8%となっています。

 廃食用油をバイオ燃料にして利用

その取り組み形態は、原料から製造して利用するという3段階があり、これは全事業者と地方自治体で傾向は同じですが、原料の回収から製造、利用まですべてやっているところが31あります。「原料の回収、購入のみ」は6で、すべて地方自治体です。  原料の種類は、廃食用油が圧倒的に多く、94%を占めます。これも、家庭系と事業系があり、ともに68%でした。食堂を持っているような公共施設も57%ありました。
 なたね油が13%、大豆油13%、ひまわり油が10%ありますが、調べたところではそれだけを使うのではなく、一緒に混ぜているケースも多い感じです。
 製造量と製造コストは、調査では年間製造量が4471kLとなりました。これは前から国も言っている5000kLというのと大体合っているのですが、調査漏れもあるので、5000kL以上あるのではないかという感触です。1事業者当たりの平均は142kLです。
 製造コストは、1L当たり104円という結果が出ています。京都市は85円だと聞いています。自治体の平均は135円で、少し高いと思ったのですが、人件費をどういうふうに参入しているかということでだいぶ違い、あるところは人件費はゼロで報告したところもありますし、あるところは人件費を乗せています。
 物材費自体はたいしたことはなく、メタノールと触媒のアルカリを加えるだけで、原料はほとんどただの廃食用油で、あとは減価償却費、それから人件費を入れるか入れないかということになります。軽油に対抗するには、100円を切らないと利用性が出ないのではないかと思います。
 製造設備の1日当たりの処理規模は、大きいところから小さいところまであり、それがバイオディーゼル燃料の大きな特徴だと思います。100〜200L規模のところが35%で最も多いのですが、100L未満が6%、5000L以上のところも9%あります。

 行われていない品質チェック

品質の検査の実施状況は、「定期的に実施」が9%であるのに対し、「不定期に実施」が27%、「実施していない」64%で、案外実施していません。こういうことではまずいのではないかということで、品質チェックをしようと思っています。そのためには、要は品質のチェック項目のガイドラインがないというのも問題なので、利用協議会がガイドラインを作れば品質管理ができるのではないかと思います。  バイオディーゼルをどういう混合率で利用しているかをみると、B100、100%バイオディーゼルが92%と圧倒的に多くなっています。これは、100%が税金がかからず、経済的に有利だということです。軽油と混ぜると軽油と見なされて、混ぜた分も含めて軽油引取税がかかります。100%ですと軽油の定義に当てはまらないということで、地方税制上、軽油引取税は取る根拠がないということになっており、それで100%を使う人が多いのではないかと思います。
 利用車両は、地方自治体をみるとゴミ収集車、民間ではトラックが多くなっています。その他としては、フォークリフトなどです。
 製造、利用を促進するに当たっての課題はというと、「法律、税制上の規制」が62%で最も多くなっています。税制上はすでに述べた通りですが、法律上でも製造するには県への届け出が必要ですとか、売る場合には売った先がしっかりしていないといけないとか、消防法上の危険物扱い規制など、細々したものがあります。税制も含めて、もう少しやりやすくしてほしいということです。
 次が「燃料の品質確保」で53%。不具合があれば信用問題ですので、品質には気を遣っていきたいということです。
 「原料の安定供給」が44%。一般家庭の廃食用油を集める場合、安定的に集めるというのは苦労するわけです。ある地域では、廃食用油を集める人が多くなって、値段がついたというぐらい盛んになっているところもあると聞いています。
 「廃グリセリン、洗浄廃水等の処理、利用」が37%で、製造に伴って出るこれらの処理などの課題もあります。

 B100の品質規格作成を

 当協議会では、B100には品質基準がないということで、決めていこうと考えています。
 バイオディーゼルの製造過程で、メタノールが残ったら困りますし、グリセリンが出たり、触媒に使ったアルカリはどうするのか、というところがそれぞれ品質のポイントになります。今まで発生する不具合というのは、金属・ゴム等の腐食が進む、燃料ポンプに析出物が付着して燃料ポンプの作動が悪くなる、フィルターが目詰まりする、寒くなると固まる性質がありエンジンがかかりにくくなる、などがあります。
 規格については、国がバイオディーゼルを5%混入したB5について、現状の自動車の規格で問題ないとしています。その代わり、トリグリセド、メタノールが残ってはいけないという基準を、「揮発油等の品質の確保等に関する法律」(品確法)で示しています。B5で売るには、この「国の基準」を守らないといけません。
 B100については、基準が示されておらず、自動車工業会の任意規格であるJASO規格や京都市が作った暫定規格があり、項目が多く分析が大変で、コストがかかり、こういう規格が出されたら容易ではないと感じている方も多いと聞いています。
 利用協議会としては、なくてはならない基準はしっかり決めて、その他は任意にするという考え方も出ています。大事なのは、水分、メタノールが入ってはいけないとか、グリセリンとか、未反応の油脂が入ってはいけないというポイント的なところはみんなで守っていって、最低この項目を守れば車がちゃんと走りますよということをしていきたいと考えています。



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