機械化フォーラムから 現地報告(1)
長ネギの新しい移植機開発と規模拡大の取組み
埼玉県農林総合研究センター園芸研究所
副研究所長   岡安 正氏

岡安 正氏 埼玉県は、全国でも有数な長ネギ栽培産地で、代表的なものに深谷ネギがあります。最近は、中国等からの輸入ネギが産地に非常に脅威になり、国際化に対応した差別化、省力・低コスト生産が課題となっています。
 そうしたことから私ども埼玉県農林総合研究センター、井関農機、ふかや農協の三者で新しい取組みに挑戦してみようということで、新しい栽培法と移植機の開発を行いました。

 新しい「平床栽培」

 長ネギは、一般的には溝植え栽培が行われています。現在も8割ぐらいはこの作り方をしています。問題は、溝に水がたまって起こる湿害、風などで倒れる害のほか、省力・低コストには、溝があるので難しくハードルが高いことです。機械ができても高品質生産という生産者の意向からすると、機械化で省力はできたが、良いものを穫るということとの適合性がうまくいかない、ということがあります。
 新しい栽培法は「平床栽培」、正式には「平床植え」というものです。平らな所に直接苗を植えていくやり方で、溝を作らないので、特徴として1つ目に、作業が非常に簡単である。2つ目に湿害が軽減される。もう1つは、揃いが良く上物率が高いということで、これが産地に普及したひとつの理由です。
 この栽培法での問題点は、1つは軟白長確保で、平床で確保できるかということ。そのために一番画期的に効果をあげたのは、土寄せ機の改良で、畝幅を広く取り土を確保し、その土を高能率にあげられることができるようになって、軟白長を確保できるようになりました。
 2番目は、植え付け能力で、深さ10cm、直径2cmの棒を何本も並べたような器具を足で踏み込み、植え穴を作って、その中に1本1本植えていくというやり方ですので、足への負担が大きく、栽培規模が大きいとこうしたことはやっていられないということで、規模拡大の障害になっていました。
 こうしたことから、移植機の開発ができないかということで、検討を進めました。
 使う人の要求を受けて、開発の目標を作り、1つは低コストな地床苗を使いたいということ、1つは高品質生産を達成したいということで高精度な密植ができるような機械、かつ現在の手植えよりも優れるようなもの。そして、生産者の高齢化や女性が頑張っているということから、扱い易い、軽量・コンパクト。そしてできるだけ安いということが要求された目標です。


 密植植えの移植機を開発

 開発に入って最初の問題は、10a当たり4万本という密植、しかも株間を2〜3cmにして、これを機械でやるというということでした。従来のタマネギ用の移植機がありましたが、ネギの場合、10cm以上深く植える、2条植えにできないかということで、真ん中にスリットを入れ、両サイドに開くような植え付け部により、深く打ち込んだものが千鳥の形で植え付けられるようにしました。それが、一番大きな改良のポイントでした。
 2つ目は植え付けたあとの姿勢の問題です。次々に植えていくので、傾いてしまうと次の障害にもなりますし、植え付けた時の姿勢により根が曲がってしまうという現象も起こります。良いものを穫るためには真っ直ぐに植えなければなりません。このために、植え付け部に姿勢矯正装置を付けることで改善することができました。
 植え付け部の能力は、植え付け条数は2条、密植のために千鳥植え、畝の高さへは0〜20cmで対応できます。株間は5〜8cm。予備苗は、予備の台をつけることでかなりの圃場の畝に対応できる量にしました。植え付け能力は1人あるいは2人作業で4000本を基準にしています。
 実際に移植機を使うときに問題になったのは苗の調製の問題で、どのような苗が良いかをテストして、最終的には、苗の調製した長さを30cm以下にすると精度が高まり、太さや根の量はあまり影響しないということもわかりました。また、苗が広がらずに7cm以下にすると良いということもわかりました。
 能力は、1人植えで手植えの2.7倍、2人植えで1.9倍。2倍から3倍の植え付け能力です。
 また、体の負担は、手植えでは改善を必要とする姿勢が約9割でしたが、機械植えでそれがほとんど解消しました。
 収量等を調査した結果、手植えをしたものと遜色ない機械であるといえます。


 現地での高い評価

 現地実証の評価は、手植えに比べて体が楽で、作業時間が半減する、長時間労働も可能となり、面積拡大ができる、植え付け精度、収量性とも従来の手植えに遜色ない、軽量で扱い易いということも評価されています。従来の平床ができなかったところでも、この機械でできるようになったというところもあり、これにより平床栽培の拡大が期待されます。
 産地ではすでに100台以上導入されており、評価の高い機械として拡大していくものと考えています。

開発した長ネギの移植機
開発した長ネギの移植機



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