7月27日(水)愛知県立農業大学校(愛知県岡崎市)
 〈安全・安心な農業機械を目指す新技術〜機械化現地フォーラム2005講演から〉

安全作業のために(事故防止技術)〜ヤンマー農機


キャビンの剛性やパネル表示など事故防止技術を紹介

農作業事故の発生状況
まず、農作業事故の発生状況から紹介したい。農林水産省が平成17年3月に発表した、平成14年の農作業事故の発生状況によると、総数で384件の事故が発生している。内訳は農業機械作業に係る事故が269件で全体の70%を占めている。農業用施設作業に係る事故が17件で4%。これはハウスなどの高所からの転落事故など。機械・施設以外の作業に係る事故が98件、26%で、これは果樹からの転落や稲わらを焼却している時の火傷など。最も多いのが農業機械に係るものだという点が注目される。
 年齢階層別にみると、高齢者の事故が非常に多く、60歳以上の割合は319件ということで83%を占めている。とくに多いのが70歳以上で233件、61%を占める。とっさの判断力などが衰えてくる高齢者の安全作業というものが重要であるといえる。
 機種別でみると、多いのは乗用型トラクタ、歩行型トラクタ、農用運搬車で、この3機種で全体の8割を占めている。なかでも乗用型トラクタが46%でほぼ半数を占める。これらが農作業事故の現状である。
 これらを踏まえて、農業機械の安全性への取り組みということで、主要4機種(乗用型トラクタ、コンバイン、田植機、歩行型トラクタ)に絞って紹介したい。乗用型トラクタについては、転倒時などの作業者安全空間の確保、予防安全としての整備不良・トラブル情報の作業者への通知、コンバインについても同じく予防安全の部分や作業時の緊急停止、田植機は乗用化への操作性、取扱性、歩行型トラクタについては確実な安全操作の確保、作業時の緊急停止などについてとりあげる。
乗用型トラクタの安全空間確保
 まず、乗用型トラクタについては、安全空間の確保というものが非常に重要となる。ところが、キャビンの快適性、視認性とキャビンの剛性はイコールではなく、剛性を持たせるためには太いパイプが必要だが、そうすると視認性、快適性が損なわれる。そこをいかに解決するかが命題となっている。キャビン仕様のトラクタの出荷動向をみると、大型についてはほぼ100%が、中型(30〜40PS)についても6割以上がキャビン仕様であることから、キャビンの安全性は非常に注目すべき点である。平成3年と16年のトラクタを比べてみると、最近のトラクタキャビンの視認性や操作性のスペース、快適性が向上していることがわかる。現在は、細くても剛性のあるパイプを使用して、視界性を確保している。
コンバインの安全性について
 続いて、コンバインの安全性について。ここでは液晶ディスプレーの画面について紹介したい。
 平成9年と16年のものを比較すると、平成9年はキャビンの左端にディスプレーがついていて、表示できる内容も、エンジン回転数、燃料、速度、エンジン負荷、各種警報など情報が限られていた。現在は、丸ハンドルの中央にディスプレーを配置しており、見やすい位置にあり、非常に視認性に優れている。表示できる情報も、従来の情報に加えて、整備情報、トラブル情報、各コントローラーの初期設定など多彩な情報を一元化して表示している。
 たとえばセンサー類の確認情報を紹介すると、チェッカーモードというものがあり、これで今現在のコンバインの状態を確認することができる。それと、メンテナンス確認情報については、サービスマンモードというものを搭載しており、これはオペレーターだけではなく、メーカー、販売店のサービスマンが確認するのに役立つ画面になっている。具体的には、エンジンオイル、ミッションオイル、バッテリーなどの交換時期等を表示し、その機械の最適な状態を保つために役立つ。これらの情報を表示させる、しないの設定もできる。
 エンジン始動時情報は、「オーガクラッチを切にして始動してください」「セーフティーペダルを踏み込んで始動してください」など始動時の安全性を確保するための表示を日本語でしている。トラブルが発生した場合は、「脱穀クラッチを切ってエンジンを停止し詰まりを取り除いてください」「オイル量が正常か点検して補給してください」など、イラストと日本語表示でオペレータに注意を喚起する。
田植機の安全性確保
 田植機の安全性確保については、ペダル変速機能を紹介したい。
 ペダル変速は自動車のAT車感覚で操作できるので、発進ショックのないゼロ発進からのスムーズな変速が可能。さらに両手でハンドルをしっかり握って操作ができるので、細い道や枕地など狭い場所でもしっかりハンドルを握ってスムーズな操作ができるというのがペダル変速の特徴である。
歩行型トラクタの安全性確保
 最後に歩行型トラクタの安全性確保について。硬い圃場でのダッシュ、車軸作業、リアヒッチ作業機による巻き込みなどからオペレータを守るために、デッドマンクラッチを装備している。クラッチハンドルを握ると走行、ロータリの回転など作動、危ないなと思ったとき、とっさに手を離すと機械が自動的に停止する機能。ハンドル形状はループタイプ、握りやすいレバータイプなどがある。また、足元に作業機がないフロントロータリタイプは、足元にロータリがないので、安全に作業でき、また、ダッシュに対しても、その反力でタイヤを押し付けるが加わるのでダッシュを抑える効果もある。

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