不耕起X溝直播栽培 |
当社の不耕起X溝直播栽培は、平成7年に愛知農試と共同研究で直播機の開発を推進したが、その栽培安定性が認められ、平成17年には愛知県内で38市町村、1050haの普及面積を見るに至った。生産台数は90台で、県内販売が74台、県外が11台、ほか5台となっている。面積を県内の台数で割ると、1台当たりの負担面積は平均で約14ha。営農集団は約30ha、個人は8ha程度となっている。県外販売分など合わせて試算すると普及面積は1270haぐらいあると推定される。
この栽培方法は、その発芽安定性がよく、耐倒伏性に優れ高収量であり、稲の栽培と機械利用が適合した新しい直播栽培である。その要点は第一に播種前の耕うん整地法である。冬季1〜2月に耕うん代かきを行い、排水して乾田化してから播種を行う。冬季に用水確保ができないところは耕うん直後に鎮圧ローラをかけて土壌を固くし、代かき後乾いたほ場と近似した状態にする。第二はこの栽培に使用するX溝直播機で、その独自の作溝作用が稲の発芽、生育、収量に適した影響を与える。また、構造が簡単なので、故障が少なく、消耗品以外は修理の必要があまりない。10条用のほかに8条用、12条用も生産しているが、10条用が77%、8条用が10%、12条が13%。最近、規模拡大によって12条用が増える傾向にある。 |
不耕起X溝直播機の特徴 |
不耕起X溝直播機の特徴は、耕うん用ロータリをベースとし、作溝輪、接地駆動輪、種子肥料の繰出し部、播種ホース、覆土チェン、ウェイトにより構成され構造が簡単堅牢で耐久性がある。

作耕輪の特徴としては@播溝の探さが均一であり、発芽が揃うA幅20?、探さ50?の溝形状は鳥害が僅少B溝周囲の土が固いので耐倒伏性を増すC毛管水の上昇が良好で発芽に必要な適湿を保つD作溝輪200?の配列は有効茎歩合を増す。作溝輪の耐久性は@使用時間が経過しても先端が鋭利で切り込みがよいA耐用面積は約60haB交換時期は先端50mmが磨耗して40?になったとき。37mmになると鳥害が急増する。
作溝輪の周速度と作業速度は、トラクタPTOが540rpmのとき作溝輪は154rpmである。飛散土量と切りこみの関係から適正作業速度を1・2〜1・5m毎秒とした。1日3〜3・5haの播種ができる。3・5haは、5人ほどの組作業で、オペレータが播種に専念できるような場合である。
接地駆動輪による種子肥料の繰り出しは@トラクタ速度と同調して繰り出すA枕地で種子肥料のたれ流しがないB設定量との誤差は僅少C広幅タイヤを使用しているので溝あけ上を通過しても空回りがない―などの特徴がある。
二重施肥播種防止装置は、往復行程の終わりで行程に端数が生じ、作業が重なる部分が出た場合、重複する部分は種子肥料の繰出しを止める機能。重複した施肥播種は稲が過繁茂になり、倒伏、稲熱病の発生原因となりやすいのでこれを防止する。ピンクラッチを抜くことで、回転動力の伝達を切り替える。
覆土の状態は播種直後は種子肥料が露出していても鳥害の心配はない。
枕地旋回して接地したとき播種ホース先端に土が詰ることがあるが、本機には播種ホースの土詰まり防止機構をオプションで用意している。自転車のスタンドのような振り子スタンドによって、接地時には機体を浮かせ、土詰りを防止する。進行と同時にスタンドがはずれ、正常な播種位置にもどる。湿りのあるほ場では有効である。 |
作業体系 |
次に作業体系だが、まず、ほ場の均平化を図ることが重要で、大型ほ場で凹凸があるときはレーザー均平機が有効。高低差は±2・5cmの精度を保つ。稲株のみ寄せないように均平前の耕うんはやや深耕とする。
冬季耕うんしろかきによる整地は、代かき時には必要以上に深水としないこと。車輪跡が残るときはドライブハローの刃の配列に工夫する。
溝切り作業は、自然乾燥によって乾田化を図るために重要。代かき後、土がようかん状に固まったとき作業する。乗用田植機か細輪の管理用トラクタに装着する。
冬季耕うん無代かきによる整地は、冬季に代かき用の用水が確保できないところで行なわれる。耕うん直後に鎮圧して、代かき後乾かした状態と近い状態にする。駆動鎮圧ローラは、ロータリの爪軸を外し鎮圧ローラをつけたものが鎮圧効果が高く、導入が進んでいる。ローラーの回転力が鎮圧効果を増強させる。適湿のとき(土壌水分17%程度)耕うんし乾かないうちに鎮圧するとよくしまる。
排水確保のための無代かき整地圃場の溝あけも重要で、無代かき圃場は稲の中干用溝切機は使用できないので、転換畑用溝あけ機を使用してほ場周囲に溝あけする。オーガー式掘削などで土が2m程度拡散するものが用いられ、溝あけ機の左右オフセット及び後進作業できる機種もあり、圃場の隅々まで機械溝あけができる。
播種作業は、土壌が適湿のときに播種する。ホイール型トラクタで車輪沈下の多いときは圃場が乾いてから播種する。クローラ型は枕地でその場旋回をすると枕地を荒らすので旋回半径を7mぐらいに大きくとることが必要と思われる。
除草剤散布は、畦畝散布は労力がかかるので、ブームスプレーヤを利用されたい。細輪の管理用トラクタに搭載したブームスプレーヤは踏付面が少ないので問題はないが太輪のホイール型トラクタを用いるとその部分は稲の再生困難で問題がある。クローラ型トラクタは発芽前、発芽後も直進行程では問題がなく、踏みつけられた稲も再生する。旋回はその場旋回すると損傷が大きいので旋回半径を大きくとり、十分な注意が必要。 |
今後の課題 |
今後の課題としては、機械の改良については、センサーにより播種ホースの詰りを感知する機械が欲しいという要望がある。また、機体の軽量化、作溝輪の耐久性の向上が必要。栽培、作業体系の改善については、各地域に適応した栽培体系の確立が求められている。 |