スガノ農機株式会社
 <これからの汎用田作り その作業体系〜スガノ農機>
当社は「土づくり」に邁進している会社で、プラウによる反転鋤き込みを前提とした作業機の開発を行っている。私どもの技術は、反転鋤き込みにより「土宙」環境を整えようということで、土の中は宇宙と同じであるという考え方で、作業機作りを進めている。
水田の汎用化づくりが重要
水田農業は基幹作物の稲だけでは持ちこたえられない。そこで、多様な作物を水田農業に取り込み、水田の畑利用を可能とする水田の汎用化づくりが重要になってきている。
 農林水産省による汎用田の定義は、「米以外の全ての作物を作ることができて、いつでも水田に戻せる田んぼ」であるとされている。田んぼで畑作物を栽培するのに重要なのは、水はけを良くして圃場を乾かすことが第一。水が表面や地中にある田んぼでは、畑作物は育たない。
 田んぼは「先天的湿田」(自然湿田)と「後天的湿田」(人為的湿田)に分けられる。先天的湿田はどこからか自然と水が湧いてきて、一度水が溜まるといつまでも乾かない田んぼ。現在は、基盤整備などで暗渠排水が入りほとんど解消されている。後天的湿田は、昔は渇きが良かった田んぼが人為的要因などのより湿田になった田んぼで、日本の湿田の90%以上が後天的湿田といわれている。その原因として、@大型機械の踏圧による硬盤形成A作土の練りすぎB表面水の排水不良などがあげられる。自分の畑や水田を掘ってみて、土の硬さ、硬盤の位置、排水性、有効土層を調べることをお勧めする。畑でも水田でも必ず硬盤が形成される。山中式土壌硬度計で硬度が24mm以上になると、根が下に伸びていかない。さらに、降った雨も作土層に溜まって下に抜けなくなり湿害になる。また、干ばつの時も、下層の水分が上がってこれず、干ばつ害になる。
汎用田づくりの作業体系を提案
そこで、汎用田づくりの作業体系を提案する。
 まず硬盤破砕。心土破砕機サブソイラは、硬盤層に亀裂を入れたり、固結した心土を破砕することで透排水性が向上し、空気量も増加する。したがって、根は養分吸収が旺盛になり、健全に伸長しやすくなる。この作業では、必ず硬盤の下まで亀裂を入れる。粘土の多い畑や連作田は、溝が埋まってしまい透排水性の効果が発揮しにくい場合がある。その時は、心土作溝土壌改良機プラソイラを用いる。プラソイラは、ナイフ表面に湾曲した7cm幅のモールドボードが張ってあり、この幅で土を抜き取る。そこへ、強度が落ち込むので土目が変わり、溝がふさがらずに水口が確保できる。また、縦に大きな亀裂が入り井戸を掘ったように土中余剰水を集積して地下へ排水する。サブソイラと比較して3割ほど軽く引け、破砕効果が数倍大きいため、透排水性が改善される。
 田植えをする圃場において、プラソイラは田植機の走行に支障が出る恐れがあるため、疎水材心土充填機モミサブローを用いる。モミサブローは籾殻を幅4cm、深さ最大45cmまで充填施工し、既設暗渠につなぐ水口を確保し表面水や横浸透水を集積して排水することができる。これにより、籾殻は大抵4年から長くて20年は腐らずにもつといわれ、籾殻が腐食して消滅しない限り、水口は確保され、透排水性は持続する。
 サブソイラやプラソイラ、モミサブローで硬盤を破砕すると、地下部の根が伸び伸びと発達し、それに比例して地上部の作物も健全に生育して増収につながる。作物の根は、想像以上に伸びる。トウモロコシは2m30cm、稲は80cmにもなる。このように、根がしっかり伸びる環境をつくることが土づくりの基本である。
土を練らない耕起法
次に、土を練らない耕起法。反転耕起ボトムプラウは、深耕と有機物や堆肥の鋤き込みをする反転耕。深耕は、根の生育範囲を拡大し、有機物や堆肥は土壌の肥沃度を向上させる。丘曳きプラウの特徴として、水平状態で作業するために、調整が簡単で運転作業も疲労が少なく安全性が高い。また、鋤き床を踏まないため、硬盤形成が軽減される。粗耕起混和耕ができるプラソイラDX。粗耕起は、作土や心土を鍬のように下から持ち上げてほぐしながら耕す。これにより、太陽熱と風で土を乾かすことができる。また、地温が上昇するため、微生物の活性により土と混和された有機物は腐食が促進される。さらに、硬盤層に亀裂を入れたり、固結した心土を破砕することで、下層土は膨軟になる。水田地帯で多く利用され、ユーザーから、「スピーディーに粗く耕すことができて土が乾く」と喜ばれている。砕土、整地、鎮圧を1工程で完了するバーチカルハロー。ボトムプラウ作業後の耕起された表層はデコボコしている。この凸凹を砕土、整地、鎮圧して播種や移植の床づくりの前準備ができる。ナイフブレードは、縦軸回転しながら土塊を砕土するので、鋤き込んだ有機物を掻き出さない。均平盤で土を均し、ローラーで鎮圧していく。適度な鎮圧は重要で、とくに蒸散防止は発芽を揃え、干ばつの時も下層の水分が、毛管現象の原理で上昇する。さらに、雨が降っても水を含みにくくなる。
 表面余剰水の排水には溝掘機が最適。畦畝ぎわや圃場の中に溝を掘ることにより、地表面の余剰水や土中の横浸透水を集積して排水することができる。表面水が排水不良の場合、集中的な雨は、表面水を明渠から流すのが一番効果的。明渠を排水溝にしっかりとつなげることにより、排水の悪い転作などでも乾かすことが可能となる。誰でも簡単に水平均平や傾斜均平ができるレーザーレベラー。排水側が高く排水不良の圃場も多くみられる。レザーレベラーは、傾斜均平ができるため、緩傾斜圃場として仕上げて入水や排水を迅速に行うことができる。圃場を傾斜させることにより、雨が降っても迅速な排水ができる。逆に干ばつの時は、入水を迅速に行うことができる。この緩傾斜圃場は、とくに粘土質の土壌に適している。均平作業に使用すれば、代かきは回数を減らすことができ、平らを気にするばかりに必要以上に土壌を練ることがない。また、無代かきでの移植も可能となる。
バーチカルハローシーダー

 バーチカルハローシーダーは、播種床を砕土、整地、播種、鎮圧の作業を1工程で行えるため、高精度で効率良く作業を行うことができる。水稲における直播栽培は、全国的には湛水直播が多いが、乾田直播は、畑状態で耕起から播種まで行えるため、水田の地体力が大きく、大型の作業機で効率良く作業が進められる。また、コーティングなしの乾籾で撒くことができる。バーチカルハローで表層部のみを再砕土し、一定の深さで播種する。播種後は確実に鎮圧するため、発芽が揃う。バーチカルハローシーダーは、米のほかにニンジン、麦、大豆、そばなどが播種できる。
おわりに
農作物の価格は下がり、今までと同じやり方では農業経営が厳しくなる昨今、手厚い保護の中にある麦やビート、大豆においても安心はできない。一番の低コストは、良い作物をたくさん収穫することに尽きる。日本と十勝とイギリスにおける小麦の単収の推移を比べると、昭和37年の日本と十勝の平均は約200kgだが、イギリスは倍の400kgだった。その後、品種改良や技術の向上、土づくり肥料や農薬の改良を経て、平成14年は十勝で600kgに達したが、これはイギリスの20年前の水準である。やり方次第でまだまだ穫れる可能性がある。
 農業だけは、人の真似をしてもうまくはいかない。それぞれの圃場ですべて条件が違う。今の経営で満足せずに、今よりももっと品質が良く、より多く収穫できる新しい方法にチャレンジしていただきたい。新しい方法の実践には、当社が実演でご協力させていただきたい。

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