17年度は合計でおよそ1000億円を要求しています。この中で数字的に大きいのは、独立行政法人関係経費で760億円です。昔、国立試験研究機関といわれた農業研究センターとか生物資源研究所などが今、独立行政法人となり、その人件費、ベースとなるような研究費を要求しています。
それから、民間研究の支援なども含め、農林水産技術研究の強化に必要な経費ということで、これが282億円あります。
17年度概算要求の重点事項としては、「食料産業の国際競争力の強化」「地域における食料産業の活性化」「食の安全・安心の確保」「今後の食料産業の発展基盤の強化」の4点をあげており、特に、科学技術関係予算全般的にですが、経常的な予算を減らし、競争的研究資金を充実させるということがいわれています。
重点事項としては具体的に次のような事業を予定しています。まず、食料産業の国際競争力の強化ということで2つあります。
高生産性地域輪作システム確立のための技術開発
特に北海道などを想定して、畑作物あるいは水田も含め、土地利用型農業について、そこをてこ入れするためのプロジェクト研究を仕組んでいこうということで、2億5000万円、新規に要求しています。
例として、北海道畑作の輪作であれば、馬鈴薯のソイルコンディショニング技術、てん菜の狭畦直播栽培技術、水田輪作ではディスク駆動式汎用播種機による不耕起栽培技術などを確立していこうと考えています。
ハウスにおいては夏の高温対策が問題なので、夏の高温対策として細霧冷房であるとか幾つかの新技術が出てきたので、これを組み合わせながら新しいハウス栽培体系を作っていこうというプロジェクト研究で、8億円を要求しています。
地域における食料産業の活性化では、ウナギ及びイセエビの種苗生産技術と農林水産バイオリサイクル研究(拡充)があります。
畜産関係は今、廃棄物処理が大きな問題となっています。そこでより幅を広げて臭気対策やメタン発酵後の液肥の有効利用、バイオマスの地域循環システムの実用化などをやっていこうというものです。
食の安全・安心の確保では、次の2つです。
安全・安心な畜産物生産技術の開発
特に、抗生物質に依存しない減投薬飼養管理システムの構築ということで、例えばドラッグデリバリーシステムということで、狙ったところにうまく薬を運ぶような技術などを動物にも応用したりとかの、新しい薬の技術を開発しようというものです。
BSE及び人獣共通感染症の制圧のための技術開発
BSEを始めとする人と獣、両方に感染するような疾病について、これまでもやってきた技術的な研究と共に、監視をするようなシステムをさらに付け加えていこうという研究です。
今後の食料産業の発展基盤の強化では、ゲノム育種による効率的品種育成技術の開発があります。
ゲノムの研究も今までやってきましたが、特にイネに関しては、全部の遺伝子の塩基配列がもうすぐ読み終わるような状況になっています。それからどういう役に立つ形質があるかということが分かってきたということもあるので、遺伝子の役に立つ部分をうまく取り出し、イネに入れていくというような育種を進めていこうというものです。
競争的研究資金の充実ということでは、5つの重点事項を要求しています。
新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業
これは基礎研究で、生研センターの東京事務所が研究を募集し、審査をして行います。特に新しい発想に立って生物機能を高度に活用した基礎研究について枠を拡大し、40億円だったものを69億円の増額要求をしています。
これもバイオ関係主体ですが、一つの研究分野だけではなくて、情報技術とバイオというように異分野が一緒になって提案してもらうもので、従来型のほか、ロボットとかエネルギー関連などの「先見課題開発型」という新しい仕組みをつくって、17億円から69億円のかなりの増額要求をしています。
民間企業の実用化に近いところでも競争的研究資金を使って頂こうということで、特別にこの部分に力をいれるという「重点領域枠」方式を新たに設定しています。これは国が募集して実施します。重点領域としては、食生活及び生活環境における「安全・安心」の確保、農業生産活動における環境負荷の低減、中堅・中小企業等を中心とした地域資源を活かした研究開発などが考えられています。
都道府県の試験研究機関を念頭に、現場に近い研究をやっていくための事業で、中でも、リスク管理型であるとか、府省連携型といって農林水産省以外の省にシーズのある研究と農林関係が一緒になって応募してもらうものについて、新規に要求しています。また、緊急課題即応型というのは、年度途中でも、何か緊急の問題が出てきたときに取り組むためのものです。
これは、林野庁など技術会議以外が持っている研究開発費を束ねて、競争的研究資金として活用してもらおうということでつくった事業です。
農林水産省では農林水産研究を効率的に運営していくために農林水産技術会議を設置しています。この農林水産技術会議は昭和31年に設置され、会長を含め7名の委員で構成され、農林水産の研究はこうあるべきだという議論をしています。
総務省の調査では、農林水産業、食品産業関係の組織別研究者数は、民間、大学、国公立の試験研究機関でほぼ3分の1ずつとなっています。研究費では、大学が少し落ちて、その分を民間と国公立試験研究機関が増えています。1機関当たりの研究者数ということでは、国立機関の人数が288人と多くなっています。
基礎研究と応用研究の開発研究の比率は、国立機関、大学では基礎研究が多く、民間は開発関係が多くなっています。
農林水産関係の研究機関は独立行政法人となり、農業関係で3つ、林・水が1つずつの独立行政法人があります。農業・生物系特定産業技術研究機構というのが、昨年10月に生研機構と農業技術研究機構が統合されて発足しました。職員数は3000人近くおり、農業関係の研究機関の3分の2はここに属しています。現場に近い研究はここで行うことになっています。
これのほか、百数十人ぐらいの研究機関が農業関係では、農業生物資源研究所、農業環境技術研究所、農業工学研究所、食品総合研究所、国際農林水産業研究センターと5つあります。 |
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